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内容説明
十九世紀後半にパースが提唱し、ジェイムズが定義づけたプラグマティズムは、従来の西洋哲学の流れを大きく変えた。二〇世紀半ばにはクワインによって再生されたことで、今やアメリカ哲学の中心的存在となったその思想運動は、いかなる意味で革命的だったのか。プラグマティズム研究の日本における第一人者が、その本当の狙いと可能性を明らかにし、アメリカでの最新研究動向と「これからのプラグマティズム」を日本で初めて紹介。いま最も注目される哲学の全貌を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
38
前回読んだときは全く読めていなかったので、色々と読み返しています。冒頭に見逃せない一文があります。「このとき、アメリカの最大の内戦、南北戦争の終結からまだ五年しかたっていなかった。この戦争によって失われた命は六十万人にも上るとされている。」他にも前半に南北戦争の影響があったことが度々書かれます。いっけん思想とは無関係の様ですが、直感的にプラグマティズムと反知性主義には関連があるのではないかというのが今回再読の目的です。単に現場で通用するだけの浅薄な思い付きでない、ヨーロッパの知(知性)に対する不信から考え2021/04/04
壱萬弐仟縁
36
パースのプラグマティックな格率:効果が行動に対しても実際に影響を及ぼしうると想定されるなら、それはいかなる効果であると考えられるか(055頁)。真理とは共同体と結びつき、その未来の姿と結びついた概念(063頁)。パースは真理とは、理想的な探究の無際限な継続の果てに見出される最終的な信念の収束点と定義(064頁)。デューイは民主主義とは人間における知的な探究や努力の形態であり、問題的状況の共有とその解決の道への共同的模索のスタイルであると主張する(110頁)。2016/06/29
SOHSA
32
《kindle本》プラグマティズムの思想とその潮流を過去から現代に至るまで、比較的分かりやすく解説した良書。細かいところへは落ち込んでいかず、読み手の関心を惹くにとどめているところが絶妙だ。ここをスタートとして更に深いところへと読み手を誘う力が本書には秘められている。巻末の『プラグマティズム入門のための文献』は初学者にとっては必要かつ十分な案内となっている。本書そのものも一度の読み込みでは不十分、再読を重ねていきたい。2016/06/29
ころこ
29
プラグマティズム=アメリカ風ということですが、ひとことで言うと有用性です。反デカルト的、反表象主義的な懐疑は、真かどうかよりも有用かどうかで行為や実践を吟味します。大陸哲学史を軽視した身も蓋も無い軽薄な議論に聞こえますが、科学に特権的な地位を与えないため批判にさらされ特異な進化を遂げています。それが閉塞を打破するためにヨーロッパの知に還流されるのは好ましいことです。しかし後半になるにつれ、有効なのか判断がつきかねるという印象を持ちました。他方で、大陸哲学もアメリカでの研究が進んでいるといわれていますし…2018/11/05
呼戯人
19
パースから始まり、ジェイムズ、デューイを経て、クワイン、パトナム、リチャード・ローティへと至るプラグマティズムの流れを概観している。2007年にローティが亡くなってから、私はプラグマティズムの流れを見失ってしまったが、しかし現在もその分厚い伝統が受け継がれ、特に女性哲学者たちに流れ込みプラグマティズムが発展していることを知った。それは、原点のパースの哲学に回帰しようという流れであり、ミサックやハークがそれを担っている。プラグマティズムは西欧の生の哲学と親縁関係にあり、その点からも読み直してみたいと思った。2016/01/11