内容説明
四方を中国山地に囲まれた、寂れた温泉町にかかる小さな石橋『かんかん橋』。食堂『ののや』の一人娘真子は、毎日その橋を渡って学校に通っていた。真子と父を残して出て行った母。かつて白無垢をまとい嫁入りしてきた写真館の老婆。町を去り愛する人とともに帰ってきた踊り子。誰もが『かんかん橋』を渡る……。小さな食堂を舞台に、精一杯生きる女たちのたくましさ、しなやかさを鮮やかに描き出した、人気作家の長編傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
60
初あさのさん。なかなか文体に馴染めなかったけど、徐々にのめり込むことができた。かんかん橋のあるちいさな町「津雲」でのお話。真子ちゃんが中心ではあるけれど、わたしは菊さんの話と和久くんの失恋話がいちばん良かった。いつも悲しい顔をしていた菊さんの旦那さんが、唯一笑顔になれる、菊さんをお嫁さんとして迎えたエピソードは涙なくしては読めない。生きているうちに菊さんに話せなかったのも、昔の男性だからなのかなあ。長瀬鉄工所の社長の行く末も気になる。あの家族、再会することできたかな。そして最後の真子の決断。それでいい。2016/03/29
はにこ
51
田舎の街でのそれぞれの時代を生きる人々。人は多かれ少なかれ悩みや葛藤があるだろうが、皆辛すぎた。それでも力強く生きる登場人物達が印象的だった。野球少年の章は同じ作者のバッテリー味が強くてちょっと懐かしい。戦争が残した傷あと、過疎化による倒産、仕事不足、早すぎる親族の死。色んな辛さが詰まっているだけに、自分の今の生活に日々感謝しなければならないと思わされた。2023/11/02
みっこ
50
序盤はなかなか進まなかったが、だんだん物語に入り込み、ページを進む手も速くなっていきました。欲を言えば、和久くん、奈央さん目線の話も読みたかった。和久くんの恋、応援したかったので残念。奈央さんと真子ちゃんの関係性が素敵でした。最終章、まさかの展開に涙。大将の野菜炒め、食べてみたい。2018/08/18
shincha
38
むかーしからあるかんかん橋。石橋のこの橋はカンカンと音を鳴らす。だからかんかん橋。昔からかんかん橋。人の一生は長いようで短く、突然の別れがあったり、出会いがあったり…人の営みをかんかん橋は、ずっと観てきた。鄙びた過疎の村のかんかん橋は、何も言わずにそこにある。連作短編集の第一巻。なんか切ないけど優しくなれそうな読後感。次に進みます。2025/02/04
酔拳2
37
中国地方の山あいの田舎町津雲を舞台にした連作。一つの章が結構長くてそれだけで一冊の本にできそう。あさのあつこ先生、ふとしたことからその人の背景の描写に移るから、物語に奥行きが出る。スラムダンクかあひるの空か、て感じ。この本を読んで元々は弱い人間も、誰かのためなら強くなれるんだなと感じた。特にシングルマザー(じゃないけど…)の珠美の話と野球に打ち込む少年、恭介の話が好きだった。最終章は危うく電車の中で涙するところだった。ところでこの表紙の女性は誰だろう?奈央さん?大きくなった真子?2021/05/04