内容説明
シーザー亡き後、ローマ帝国独裁の野望を秘めるアントニーはエジプトの女王クレオパトラと恋におちる。妖女の意のままになったアントニーはオクテイヴィアスとの大海戦に敗れ、クレオパトラ自殺の虚報を信じて自殺する……。多様な事件と頻繁な場面転換を用い、アントニーとクレオパトラの情熱と欲情を描いて四大悲劇と並び称される名作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
127
シェイクスピアの4大悲劇などとはいくぶん趣きを異にする。つまり、作家の創作に関わる部分が少ないようなのだ。その意味では確かに「史劇」とする見解はもっともだ。基本的には『プルターク英雄伝』に基づくらしいが、例えば塩野七生の『ローマ人の物語』(史書ではないが)で描かれるアントニーもやはりこのような人物像だ。すなわち、「カエサルの後継者たる器量を持たない男」との評価である。劇の頂点は意見が分かれそうだが、私はクレオパトラの船が敗走を始めた時点にあると見る。なお、クレオパトラはもう少し妖艶でもよかったのでは。2013/08/02
ヴェルナーの日記
120
シェークスピア作品で、凡そ『ジュリアス・シーザー』が悲劇時代の始まりであり、本作『アントニーとクレオパトラ』は、ほぼ同時代の最後に位置づけられる。有名な悲劇『ロミオとジュリエット』は、若き青春の熱く迸る情熱的な悲恋を描いたのに対し、本作では成熟した大人の濃厚な愛の駆け引きを描いたといえよう。『ジュリアス・シーザー』においてアントニーは、民衆を我が身に惹きつけること成功し、一躍英雄に登りつめるが、クレオパトラとの恋によってシーザーと同じく凋落していく。この視点から観る時、クレオパトラは男どもを凋落する悪女?2016/04/21
優希
109
『ジュリアス・シーザー』の続編とも言えると思います。シーザー亡き後、アントニーとクレオパトラは恋に落ちてしまう。その恋は濃密であり、且つクレオパトラの手の平で転がされているような印象すら感じます。クレオパトラの意のままに動いたと思えば、彼女の自殺の虚報を聞いて自殺する。まさに情熱と欲情のままに動かされた悲恋の主人公がアントニーと言えるような気がします。恋は堕落へと突き落とす恐ろしい政治的要素になり得ることを感じました。2017/05/11
優希
58
シェイクスピア4大悲劇よりも悲劇的な物語と言っても過言ではないでしょう。物語としては『ジュリアス・シーザー』の続編と言えると思います。シーザー亡き後、恋に落ちるアントニーとクレオパトラ。クレオパトラの自殺後、後を追うように自ら命を断つのは、情熱と欲望の象徴かもしれません。アントニーとクレオパトラの恋は、濃密ながらもクレオパトラの手の上で転がされているようでもあるのですから。2022/12/27
活字の旅遊人
37
『ジュリアス・シーザー』がかなり良かったので、続きのつもりでこちらに。アントニーというのは、世界史の教科書でいうところのマルクス・アントニウス。この本に出てくるシーザーは、オクタビアヌス。この二人の対立の背景を知らないと、理解しづらいかもしれない。欧州人には常識? で、クレオパトラは前のシーザー、『ジュリアス・シーザー』の主人公というか被害者であるカエサルとも関係があったから余計ややこしい。そんな訳でローマ史を振り返りながらの読書になった。クレオパトラの幕引きは日本人には感じ入りやすいかもしれない。2025/04/16