内容説明
母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠、たった一人で出産を迎えようとするカメラマンの真菜。七十歳を過ぎても、育児中に始めたマタニティスイミングの指導員を続ける晶子。あの日、あの震災が、二人を結びつけた――。食べること、働くこと。子供を産み、育てること。世代の違う二人の物語を丁寧に紡ぎつつ、時代とともに変わりゆく女性たちの生を凝視した渾身の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
400
やはり窪さんはわたしにしっくりくる。途中いくつも波が来て、そのたびにわたしも(いい意味で)翻弄された。女性読者はきっと登場人物の誰か、どこかしらの時点に自身を投影してしまうだろう作品。ひとつだけ、真菜の言葉を借りて、仕事を持つお母さんを批判するような箇所が見られたのだが、わたしの読み違いだと思いたい。未来と希望の象徴として描かれた赤ちゃんを、手に抱きとってその重みや匂いを楽しみたいと思わせられる作品だった。2018/08/26
新地学@児童書病発動中
123
太平洋戦争を生き延びた女性の人生と、昭和を生きのびた女性の人生が、震災の日に交錯する。命とは何か、生きるとは何かといった問いかけを、読み手の心に投げかける素晴らしい作品。読んでいてこれほど胸が震える小説は少ない。主人公の一人晶子が、もう一人の主人公真菜に必死になって関わりを持とうとする姿勢が素晴らしい。晶子はただのおせっかいな女性だ。それでも、彼女は虚無的な気持ちのままに出産しようとする真菜に、救いの手を差し伸べる。晶子のこのような姿勢の中に、この世を少しでも良い方向へ変えていく鍵がある、と思いたい。2017/06/01
優希
121
女性の強さと弱さを見たようでした。生まれた時代も世代も違うのに、それを超えた「女性」を描いています。それぞれの道の歩みを丁寧に紡ぎ上げ、その生をしっかりと見据えているのが心に響きました。3.11をも取り上げることで世界観はより深く掘り下げられているように思います。変わりゆく女性たちのリアルが突き刺さりました。2017/04/22
あすなろ
112
窪氏はこういう作品を描くのだと慧眼を開いた。戦後に続く東日本大震災が2度目の我が国の敗戦であったと言われたあの10年前。その間の目まぐるしい変貌の中で子育てや女性の自立で変わったもの、変わらないもの。そんなことを考えさせてくれる。育児や家族の在り方の変遷も考えさせられる、非礼ながら望外だった秀作。もう少し長く描いて頂いても良かった。そして、以下を僕の感想の代わりに引用。女の人がさ、何かをやりたいって言ってきた時には、もう始まってるんだ。男はさ、もうそうなったら口をぽかーんと開けて見ているしかないんだよ。2021/03/21
machi☺︎︎゛
106
3.11の事をテーマにかかれた小説。実際にあった事だから話にも自然とリアリティがうまれる。70歳をこえてマタニティスイミングコーチをしている昌子と父親のいない子を産む覚悟をした真奈。2人を軸にして周りの世界を丁寧な文章でかかれていて流し読みじゃなくてじっくり読めた。女性の強さと未来への可能性を感じた1冊だった。 2019/02/09
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