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内容説明
民主主義は熟議を前提とする。しかし日本人は熟議が苦手と言われる。それならむしろ「空気」を技術的に可視化し、合意形成の基礎に据える新しい民主主義を構想できないか。ルソーの一般意志を大胆に翻案し、日本発の新しい政治を夢想して議論を招いた重要書。文庫オリジナルとして政治学者・宇野重規氏との対論を収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
19
ゲンロン0を読む前に。著者が強調するように、ネットによる直接民主制論ではなく、現代のデータベース集合の技術で曖昧な概念であったルソーの「一般意志」の具体的可視化が可能になったという認識の上で、人間的理性(カント)と動物的無意識(フロイト)が相剋する場としての政治の在り方を描いた試論。実現性に乏しい夢想的なエッセイだと批判することは容易いが、日本の政治を巡る言説に閉塞感が増している今のタイミングで読むと、新たな可能性を説いた言葉としての輝きが発行時より増しているようにも感じる。優れたSF小説のようでもある。2017/04/25
みっちゃんondrums
16
異なる意見を討議して合意点を見いだしてゆくのが、アーレントやハーバーマスの説いた熟議による民主主義であるが、現実に政治は不全で、意見を主張するだけの平行線が続く。そこに筆者独自に読み解いたルソーの一般意志(コミュニケーションを不用とする)を取り込もうという。一般意志2.0とは情報の取捨選択に表れる人々の欲望の履歴であり、人々の集合的無意識から立ち現れる「空気」。この方向に進むのだろうか。「空気」は恐ろしいということも私たちは知っているはずだけれど・・・2016/08/07
ネムル
15
ルソーの「蛮勇」な読解からなる、民主主義の刷新。アーレントの言論にもリベラルな政治論にも同意はすれど、いまの政治における無力さと閉塞感に、少し異なる道筋を見せてくれる。好著。特に仮面が重視されるような熟議に対して、反対に動物的な欲望に注目するのがミソか。欲望を可視化することで、そこにブレーキをかける。そうした東のイメージは全く異なる民主主義の創造ではなく、熟議型民主主義の刷新だろうか。そのためリベラルな政治論が陥る弱味を避けえず、あとがきでは東も苦しさを吐露しているように感じる。2019/02/18
蛸
14
この本は近代民主主義の根幹とされているルソーの一般意志を読み替える試みから始まる。一般意志はルソーの社会契約論における架空の概念でしかなかったが現代においてはテクノロジーによって可視化することができる(のではないかと著者は主張している)。著者はネットに記録された人々の無意識の欲望を反映したそれを「一般意志2.0」と呼ぶ。ポストモダン以降の、人々が共通の基盤を失った社会ではもはや議論が成立しなくなってしまった。そのような状況では従来理想とされてきた(理性による言葉を前提とした)熟議型の民主主義は成立しない。2020/06/25
みのくま
12
「熟議」や「選挙に行こう」といった意識の高い政治的言説に、ぼくはずっと違和感を持っていた。全ての成人が政治に強い関心を持ち、意見を公に表明するなんて事は有り得るのか。著者はまさに「弱者」の思想家ルソーを新たに読み直す事で、政治に関心を持たず意見も表明できない人々の民意を汲み取ろうとする。それがSNSなどに書き込まれる人々の無意識の表出であるところの「一般意志2.0」である。但しここで間違えてはならないのは、著者は決して一般意志2.0だけでよいとは言っていない。選良の熟議の歯止めとして大衆の欲望があるのだ。2019/08/10
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