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内容説明
ヒトは生物学的見地から見れば41歳が寿命であり、現代人は膨大なエネルギーにより生かされている「人工生命体」だ。年齢を重ねた著者が人間にとっての寿命を思考。「私」だけの幸せを追求する現代社会にも一石を投じる異色作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
39
ナマコにはホロスリンという毒が体じゅうにあるという。サポニンの一種。細胞膜を壊す働きがある(20頁)。ナマコは死に際として、身体がきょくたんに軟らかくどろどろに溶けてしまう(34頁)。文化的サービスで最重要なのは、生態系が住民の文化に大きな影響を与えること(75頁~)。原発では自分の都合のよいことだけを想定した仮想天国で生きているのが現代日本人の生き方。薄っぺらな生き方(125頁)。日本社会の時間と人間の体の時間のギャップは拡大。不幸になる一方(182頁)。2016/03/26
chanvesa
27
「好き好き至上主義」(111頁、選好充足功利主義)は、テレビやインターネットと相乗的に蔓延してきたという指摘は納得してしまう。この十年位で寛容さは世の中からどんどん消えていると思う。生物多様性の否定は社会の硬直と、いざというときのヒントを喪失させる。『ゾウの時間…』でも指摘されていた心臓の鼓動15億回寿命と文明進歩による40代で寿命としたあとの余命の過ごし方を幅広い意味での「生殖」に当てようという指摘は面白いけど、生物的にはがんになったり無理が祟るのも40代からなんだろうから、気を付けなきゃと怖くなる。2016/04/24
HMax
26
「好き好き至上主義」が蔓延する現代。自分の好きなことを追求することに至高の価値を見出している。結果、様々な時間加速装置に莫大なエネルギーを使い環境問題が生じ、さらに時間環境までをも破壊している。人生100年時代に突入しましたが、生物としての寿命は約40年(哺乳類はすべて15億回の鼓動で終了)。せめて定年後の健康な間は次世代のための時間として使いたい。と今は思います。忘れた頃に再読したい。付箋だらけになりました。良書。2018/07/14
びっぐすとん
16
図書館本。著書を3冊も読んだ後では既視感は拭えないが第5章の現代の教育への危惧は教育の現場にいた著者でこその実感がある。第6章の老いについて。ヒトはそもそも寿命50年程度に設計された生物。以後の人生は保証期間外、ガン(遺伝子のエラー)になるほど長生きするとは想定されていないのを技術の進歩で生きている人工生命体ということや「では保証期間後をどう生きるか」という部分が面白い。生物としてのこの世の永遠、精神の拠り所としてあの世の永遠。日本人が神道と仏教を使い分けていることへの指摘に納得。保証期限迫る身に沁みる。2019/02/09
nizimasu
13
本川先生の新作。今回も刺激的な内容満載でしたがドーキンスの「利己的遺伝子」の説に近いながらも生命である私を伊勢神宮と対照して考えていて遷宮のように自分が新しくなって次の世代にバトンタッチされるというエピソードから本川先生の生命観みたいなものが垣間見える気がした。その上で生態系のネットワークの中の私という捉え方をしていた上田閑照さんの哲学論も紹介していて「私」を拡張して周辺の他者や自分に関わるものを私的に捉える手法はかなり仏教的な感じ。現役時代は遺伝子の奴隷であり老年世代は次世代のため奉仕せよは著者の心情か2016/02/17