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内容説明
テロはなぜ「終わらない」のか。武力によって平和な社会をつくることはできない。もはや私たちも他人事ではいられない。パリ同時テロの背景にも通じる、世界でいま、起きていることとは。欧米「軍産複合体」の暗躍、中東における石油争奪戦、麻薬ネットワークの「闇経済」……。米・ロ・英・仏・中の思惑と、中東の現実から、「第三次世界大戦」とも形容される複雑な国際政治情勢をわかりやすく読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
41
モーツァルトもベートーベンも「トルコ行進曲」を作曲。トルコはヨーロッパから畏敬の目で見られていた大帝国。中東はその一部だったが、ゆっくりと衰退し、欧米の謀略や侵略によりつまみ食いされたのが今の姿。資源豊富なことや対立の火種が尽きないことが裏目に出て、潤沢なオイルマネーを還流させる兵器産業の巨大市場という機能を負わされている。さらに麻薬の闇経済は犯罪組織の資金源になり、地域を不安定化させている。この地域に光をもたらすものは、識字率の向上、特に女子教育。少女マララのノーベル平和賞受賞はその理念へのメッセージ。2016/10/26
リキヨシオ
35
日本人にとって戦争は侵略行為というイメージが強いけど、今世界中で起きてる戦争や紛争やテロは完全にビジネスになっている。特に中東では、豊富な資源を巡る「石油」争奪戦、永遠と続くテロ戦争と軍産複合体による「武器」の供給、「麻薬」ネットワークが複雑に絡み合う。卑劣なテロ行為は批判するのに無差別の空爆やドローン攻撃は支持する…戦争=儲かるビジネスを望む権力者は少なくない。安保法案が通った日本が近い将来どうなるのか?不景気だから軍産複合体に喝采を送っていいのか?日本人にとって戦争ビジネスが近づいているのは確かだ。2016/03/24
mazda
29
世界最大の武器輸入国、サウジアラビア。戦争終結後、新政府の不公平感により国内が分裂しているイラク、次に世界覇権を握ろうと画策する中国...。国と国の思惑の違いから、摩擦を生じている現状、やはり力を持つことが大切だと痛感させられます。石油のために戦争が起き、力のないものが犠牲になり、若年層の失業率が高止まりすることで、ISなどのテロ集団に流れていく。そして、また新たなテロを生む、という悪循環...。一体いつになったら、本当の世界平和は訪れるのでしょうか?2017/03/24
よこしま
28
イスラム圏における石油などによる地政学。米露中を含めて。◆初めに内藤正典氏の「イスラームから世界を見る」などの入門編を読んでいないと苦しいかな。◆現在のイスラム圏の国々と米ロ中との資源や武器のやり取り、各国のIS(アラビア語ではダーウィシュ)による被害や関係性が詳しく書かれています。今、PCなりスマホなどで読まれてる方々に知って欲しいのは、日本のエネルギーやモノはイスラーム圏による恩恵です。シリア難民やガザの悲惨さを考えてほしい想い。◆残念なのは肝心のISの成立ちが記載なし。西欧が大きく関わっているのに。2016/02/13
ミッキー・ダック
26
著者は、現代イスラム研究センター理事長。本書は、中東での紛争やテロがなぜ起こり、欧米や露・中がどう関わり、日本はどう関わるべきかを明らかにしている。武力による少数派支配、石油による富の独占と国民の貧窮、支配層の宗派の違いによる中東諸国間の対立、欧米諸国による石油利権の争奪戦、戦争を助長し戦争で潤う米英仏露の軍産複合体、中東国民を避難民かIS兵士に追い込む戦争といった構造が、丁寧に説明されており説得力がある。日本は、戦争依存の米国に軍事協力するのではなく、中東諸国の民生安定を支援すべきと説く。賛成だ。 2016/02/20