内容説明
歴史を変革する人物を描きつづけた著者が初めて身近な、正岡子規の詩心と情趣を受け継いだひとびとの豊饒にして清々しい人生を深い共感と哀惜をこめて描く。司馬文学の核心をなす画期的長篇。読売文学賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
87
名作「坂の上の雲」で描いたのは秋山好古、真之の兄弟と正岡子規。その正岡子規に係る人々、妹の律、正岡家の養子となった忠三郎、その友人である西澤隆二らを語る物語。これまで、武士、軍人、政治家など、戦国時代から明治にかけて、世の中を動かしていた人物を描くことが多かった司馬作品。その中では異質な作品だろう。少しとまどいながらも、後半へ。2016/07/11
遥かなる想い
70
司馬遼太郎にしては珍しく大正・昭和の人物を描いた作品。既生の人への配慮からか、やや 淡々と踏み込まずに書いているような気がする。2010/07/31
Die-Go
57
図書館本。正岡子規にまつわる人々を淡々とした筆致で描く。戦記もののように血沸き肉踊る展開は期待できず、今のところ面白味はイマイチ感じることはできないが、下巻まで読んでみようと思う。★★★☆☆2018/05/21
レアル
54
正岡子規に関連のある人を、養子忠三郎を中心に話が語られる。正岡子規よりもその妹律の話に驚愕した。『坂の上の雲』では健気な部分が多く、子規に対しても献身的な介護をした律。その献身的な律だけしか知らなかったので(それも本当の律だが)それ以外の律に今までのイメージを覆させられた感じがする。いや、より律の人生に興味を持った!と言った方が正しい。司馬氏の回顧録面白い!下巻へ。2018/02/28
たつや
51
事前に情報を入れずに読めた。大阪の梅田で道に迷う司馬さんから物語は始まる。チョコレート色の阪急本社のビルが見つからない。これだけでも面白い。そして、正岡子規には死語に未亡人がとった、養子がおり、名は正岡忠三郎さん、で、その方の葬儀に出るまでのお話ですが、明らかに「坂の上の雲」繋がりなのはわかるが、これも、縁と司馬さんはいいそうですね。こういう、律儀さが作品にも現れ、読者に伝わり、今も愛されているのでしょうか?下巻も楽しみ。2016/11/10