内容説明
家族だから、嘘をつく。突如として宣告された進行癌。三十歳で独身、中島育子はクリスマス・イヴに手術室にいた。終始ツキのなかったこれまでの人生。朦朧とした意識の中、毎年クリスマスには家を空けていた父親のことを思い出す。嘘ばかりついていた父はあのとき何をしていたのだろう。現代版「クリスマス・キャロル」がここに。泣ける、笑える、面白い!すべてを堪能できる作家、それが加藤元。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
88
30歳独身の育子。クリスマス・イヴは進行癌と取り除く手術日。はじまりの訳がわからない不穏さから徐々に明かされる、育子と家族の来し方。「私がいない」の「私」は誰なのか。クリスマスのお祭り騒ぎとは対極に、生きることの辛さや罪を投げかける。奇跡とは華々しいマジックのようなものではなく、人が抱える荷物がほんの少し軽くなる瞬間のことをいうのではないだろうか。とてもよかった。2020/12/25
はつばあば
60
雷がすさまじく鳴っている。心に重かった今迄読んだ崩壊家族を書いた本達をこの本が、雷が浄化してくれているようだ。家族の愛や暖かさは子供にはなかなか理解しにくいし事もある。家族だから言ってしまう失言・嘘に傷つき大人になる。この本の母親はストレート過ぎて人を傷つける(・・私みたいと反省しきり・・)だけど子供への愛が溢れているが故に、ふんわりと溶解していく。クリスマスと題名にあるのだからクリスマスに読むべきだったろうが、今の私には「時の渚」と同じく読み時だった。加藤元さんは初めての作家さんでした。2016/09/28
いしかわ
50
「嘘」をテーマにした物語。私は 今までいくつ嘘をつき、どのくらいの嘘を浴びてきたのだろう。優しい嘘や、ついてはいけなかった嘘、後悔の嘘…。家族だからこその嘘は、重く、温かく、そして、深い。タイトルに惹かれて購入したこの作品だったけど、思いの外 ファンタジー色が強い。前半は微笑んでしまう描写も多かったが、ラストにかけて 明らかになってく真実と、優しさに胸打たれる。2015/12/12
shizuka
46
加藤版「クリスマス・キャロル」。クリスマスの1週間の物語。のっけから入院、手術と不幸に見舞われる主人公の女性。特に予定もないけれど、イブに手術の予定を入れられるなんて!と、馴染みのある間の悪さを改めて痛感するところなど、地味に面白い。要所要所でなぜか現れる薄汚れた白猫や、なんだかんだで心の師匠であるミツさんの正体など「おお!」と思わせる展開が私の心をくすぐる。一筋縄じゃいかない感じに酔いしれた。トータルちょっと切なく悲しい物語なんだけれど、でも読後感は悪くない。今までのモヤモヤが片いてよかったじゃん!2019/08/27
to boy
24
ちょっと複雑な構成。夢の話が出てきたり、一人称の人物が入れ替わってみたりと一瞬戸惑ってしまいました。父親の秘密が後半になって明らかにされてきて少しずつ話が面白くなってきました。猫の登場が良い味だしてます。2015/12/06