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内容説明
従来のハイデガー『存在と時間』解説書はアリストテレスや中世スコラ哲学、新カント学派、フッサール現象学、ユクスキュルの生物学等からの影響や相関関係をめぐる専門的な問題に集中しすぎるきらいがあった。それがどうして当時のドイツやフランスの若者を引き付けたのか、現在でも多くの哲学者を魅了するのか、思考の枠組みは従来の哲学とどう違うのか、普通の人の人生にどのような意味があるのか等、哲学学習者の興味に答える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
45
以前は人間という存在は如何なる存在か、と実存主義的に読まれていました。それは、そもそも存在するということとは如何なる事態かという問いとして立ち上がっていたはずです。思弁的実在論はこの議論の更に外側に出ようとしており、マルクス・ガブリエルの議論は現存在に極めて近いことに気付きます。『存在と時間』であっても、存在するということを直接理解するには至らず、周囲を廻っている印象を受けます。所詮、人間には人間の一定の可能性の範囲でしか存在を理解できませんが、それを絶妙に論じているのはハイデガーであったと再認識します。2019/04/26
みつ
34
間もなく「高齢者」に足を踏み入れる我が身を顧みて、「未読の必読書」の筆頭とひしひしと感じている『存在と時間』。かつてのNHK番組『100分de名著』ではなんとなく分かったように感じていたが、以来本家を手に取ることもなく、まずは入門書からと考えたものの非常に難解。「現存在」「世界内存在」「投企」「先駆的決意性」「歴運」などの術語も、「死へと向かう本来的存在を自らの「実存」として受け容れることを「自由」と呼んでいる。」(p149)などの言い回しも、独特の魅力に富んでいるが、分かったかとなると全く心許ない。➡️2023/10/28
テツ
20
『存在と時間』の解説書。そもそもハイデガーによる原著が難解な上に未完だけれど、ぼんやりと理解が(2ミリ程度)進んだ気がする。この世界に否応なく投げ込まれたぼくたちは死という約束された終わりのイベントごと環境も偶然も全てを引き受けて存在する。現存在としてのぼくたちは、能動的に、受動的に、世界を選択し、その結果にまで責任をもち、存在を続けていく。自身の生をどんな覚悟でどう消費していくのか沈み込むように考えたい。ハイデガー語のような難解な言葉もなるべく避けて書かれているようでかなり読みやすかったです。2021/07/07
masabi
20
ハイデガー『存在と時間』の解説に焦点を当てた一冊。ハイデガー独自の語法を筆者が可能な限り噛み砕いて説明しているので、ある程度理解することができた。デカルトによる近代哲学の確立が西洋哲学から存在論や時間論を日陰に追いやったことを問題視し、それらを再度哲学史に位置付けようとしたのが氏の著作である。『存在と時間』の引用が随所でなされていたが、解説なしにはその理解は困難を極めそうだった。難解な書を一回読んだだけで理解しようとするのは蛮勇だが。2016/03/25
nami
14
難解な「存在と時間」の中でも特に難解な箇所を要約してくれているのでわかりやすい。あとがきに書かれていた「ハイデガーというのは、自分が一体何者なのか、何をやっているのか分からなくなる不安定な気分の中で読むにふさわしい哲学者であるような気がする。」この言葉にはとても頷ける。決められた運命(責任)からは逃れられないが、自らの行為に意味付けをして、自分の物語を作っていくことは出来る。虚無感が付き纏う人生だからこそ、「ただ何となく」生きている暇など1秒も無いのだと、行き詰まった時には思い出したい。2024/05/08