内容説明
オリンピックに参加した自身の体験を描いた「オリンポスの果実」、晩年作の「さようなら」ほか、珠玉の6篇を厳選。太宰治の墓前で散った無頼派私小説家・田中英光。その文学に傾倒する西村賢太が編集、解題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
19
西村賢太が敬愛していた昭和の私小説作家・田中英光の短編集。編纂した西村賢太によれば、自分にとって最も誇れる仕事の1つだという。野狐、さようなら、が良かった。いつの時代も悪女は変わらない。弟子としての、太宰治の証言記録でもある。2022/08/27
to boy
19
太宰に私淑していた田中さんの作品集。「オリンポスの果実」は再読、他は初読。まったくの私小説ですが、終戦直後の世相、文壇の様子が垣間見られて面白い。太宰との交流を描いた「生命の果実」が特に良かった。作品集を読むと田中さんの誠実さ、純粋さがひしひしと伝わってきます。誰かが言っていましたが、自死せずにいれば大作家になっていたような気がします。2015/12/10
東京湾
10
「ボクはどうせ、ひとりなのだから、ひとりで自分の生きたい路を歩いてみたい」師である太宰治の墓前で自殺した無頼派作家・田中英光。この傑作選に収められた短篇は同時に彼の生涯の軌跡でもある。五輪出場と選手団の中での儚い恋、戦後の共産運動への失望、太宰の死、生活の荒廃、やがては告別への想いまで、小賢しい修辞で誤魔化すこともなく、剥き出しの感情を綴っていた。初期の文学青年らしい青臭くも純粋な叙情、戦後の貧窮する生活での救いなき退廃、兎に角心を打たれるものがある。特に「さようなら」が描く生と死の生々しさは衝撃だった。2019/08/04
村山トカレフ
5
「オリンポスの果実」を含む6編を西村賢太がセレクト。オリンピック選手、早稲田卒、薬物中毒と自堕落な生活。太宰を私淑し追うように墓前で自死。とまあ、西村先生が復読につぐ復読と表現するやうに、影響を受けている処を随所に発見。体言止めなどは一瞬西村作品を読んでいるのかと錯覚。そんな発見に嬉しい気持ち。英光は所詮エリートであるとの弁を何某のインタビューで読んだ記憶がありこれにも納得。鮮烈な印象の「野狐」と「離魂」は筆致は荒削りで西村先生曰く「下手」な部分も大いにあるのだが、読み手を引きずり込む狂気と刹那が凄い。2017/03/06
Rieko Ito
4
「オリュンポスの果実」だけを読んだ。太宰に心酔し自死した作家の作品ということで「純文学」として読むと、さほど深みもなくつまらない。しかし「戦前のラノベ」として読むと、ダメ男のうじうじした恋心も結構面白く読める。「英光さんは告りたい」。2020/06/26
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