雲は答えなかった - 高級官僚 その生と死

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雲は答えなかった - 高級官僚 その生と死

  • 著者名:是枝裕和
  • 価格 ¥630(本体¥573)
  • PHP研究所(2015/11発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784569761558

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内容説明

『そして父になる』の是枝裕和監督、その原点となる傑作ノンフィクション! 本書は、世界的に評価される是枝裕和監督自ら、“原点”と位置付ける記念碑的作品である。初のディレクター作品となったドキュメンタリー番組『しかし…福祉切り捨ての時代に』(1991年)の放送後、取材を重ねて29歳で執筆したノンフィクションで、題材はある高級官僚の生と死。水俣病訴訟を担当し、1990年に自ら命を絶った官僚・山内豊德の歩みを丹念に辿り、「人はいかに時代と向き合うべきか」を問うた普遍的な作品となっている。映画作家・想田和弘監督はこう評す。“読後感は、上質な小説か劇映画のそれに似ていて、(中略)是枝の手による「山内豊德」像は、フィクションとノンフィクションの区別を越えた「表現」に昇華されている” 刊行から22年――。是枝監督の“原点”はいま、何を問いかけるのか。本書は1992年刊行の『しかし…』を改題し、2001年刊行の『官僚はなぜ死を選んだのか』をもとに加筆・修正したもので、今回の出版に際しては、是枝監督による「刊行にあたって」、想田和弘監督による「解説」を新たに収録。すでに読まれた方にも、再読を勧めたい。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おさむ

46
20代で、これだけの深い取材に基づくノンフィクションが書けた是枝さんの文才に脱帽。西川美和さんもそうですが、最近の映画監督はマルチな才能の方が多いですね。1990年に53才で命を絶った環境庁官僚・山内豊徳氏の人生を振り返る。心配りが過ぎるあまりに荷物を背負い込んでしまう。一種の過労死だったように見えます。2015/12/29

安南

44
是枝裕和監督の原点となったノンフィクション、水俣病訴訟を担当した環境庁エリート官僚の自殺を扱ったルポ。絶版になっていたがタイトルを変えて文庫化。やっと読むことができて嬉しい。追いつめられ、疲労がピークに達していると感じた夫人が「そんなにして命がけでしなくちゃいけない仕事なの」と聞くと、「私達は命がけなんです、って患者さんは言うんだよ」と話す山内氏。誠実さ、優しさは官僚の世界では価値を持たない。世間でいわれているような板挟みの衝動的な自殺というより、武士の切腹に近いものに私には思えた。2014/05/17

がいむ

33
映画監督是枝さんが、初のTVドキュメンタリー番組を作った後さらに取材して書かれた本。20代のときの本がタイトルを変えたり、加筆されたりで今回3度目の出版とのこと。まず感想として、文章がうまいなあ!固いけど読みやすい。水俣病訴訟を担当する官僚の自死に至るまでのドキュメントなので重い内容なのだけど、事実は事実として、一般人としての生活の中の描写も多くていろんな視点から読める本。監督自分自身で「原点」と言わしめるノンフィクション。たまたますすめられて読めたことがよかったと思う。2014/05/23

みねたか@

25
環境庁筆頭局長として水俣和解勧告拒否の矢面に立った山内。駆け出しディレクターだった是枝氏は生活保護行政を告発する番組を手がける中で山内に引き寄せられ番組を変更。そしてこの書を著すことでようやく彼に別れを告げる。様々な思惑と信条との間で葛藤した山内。長く仕事をするうち現実に流され,青春期の想いとは決別し成長や老成という言葉で紛らわせてしまう私たち。山内は最期に15の時に書いた「しかし」という詩にたどりついた。既に彼の没年齢と同年代にある者として、真摯に自己と職業人としての行動に向き合った姿勢に強くうたれた。2017/10/02

お昼寝ニャンコ

23
この本を読もうと思ったきっかけは、読メの他の方のレビューを拝見したからでした。さらに、かつて観たことのある何本かの映画の監督が書かれた本という事に興味を持って読了。読んで良かった。53歳という若さで自ら命を絶つ迄に追い込まれていった1人の官僚の人生に焦点を当てたノンフィクション。次官は確実とまで期待される程優秀だった故人が何故自死せざるを得なかったのか。水俣病や福祉に関わる中で、組織や官僚社会の渦に呑み込まれてゆく1人の人間の人生が浮き彫りになっている。読後はやるせなく悲しく、重い。その重さに意味がある。2016/10/14

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