内容説明
アベノミクスで株価が上がり、2020年の東京オリンピックも決まった――だが、それで「天下泰平」なのか? かつて「ABCD包囲陣」というものがあったが、近年はアメリカ、コリア、チャイナの「AKC包囲陣」とでも呼ぶべきものが日本列島を覆わんとしている。アメリカは国力が衰退し、中国もバブル崩壊寸前、韓国にいたってはもうどうにもならないから、「日本人はカネを持ってそうだし、ちょっと突けば少しは出るだろう」といったところか。だが、そのカネを失ったあとに何が残る? いま日本、世界、人類が劣化しているのはなぜか――。歴史、文化、芸術に造詣の深い、漫画家の黒鉄ヒロシ氏は自らを“猿”に見立て、「いまの日本、世界、人類が抱える病について、最も攻撃的守備範囲の広い“仙人”(西部邁氏)にお尋ねするために、山の頂までやってきた」というのが本書のコンセプトだ。ニ粋人が劣化列島の頂で絶望を朗らかに語る、真剣な冗談。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
17
題名通り、もはやこれまでという気分。でも挫けてはいられない。高校生の時に知った西部氏は今はいなくなってしまった。2018/06/17
姉勤
14
東京の地方局、TOKYO-MXテレビの、「西部邁ゼミナール」ではお馴染みの二人。なので、一読者としてはすでに薫陶を受けている。今では数少ないテレビ視聴番組である。シニカルでありながら直球の意見は、日頃の莫たる不満、不安、不見識、不愉快などをサッパリさせてくれる。カウンターではなく、並んで肩を叩いて、そっちの方向でいいのか?と逡巡させてくれる。2014/04/30
Yoshihiro Yamamoto
3
B- 西部邁の書くものは面白いが、難しいので、黒鉄ヒロシとの対談なら分かりやすいだろうと思って購入。しかし、やはり随所で置いてきぼりを食った感が否めない。先日読んだ劣化国家同様、人類が「劣化」しているとの問題意識に基づく。その原因を経済、教育、国家、戦争と平和などの側面から読み解く。「未来を見て不幸になっている」「文化的小児病」「イノベーションが元凶」「予測できない未来に対応できるのは人間の組織しかないのにすべてをマーケットに任せようという愚かさ」「グローバリズム=ユニラテラリズム=アメリカ帝国主義」など2014/01/04
モンドノスケ
1
228頁の黒鉄さんの「しかめつらしい会議が行き詰まるのは、たいてい、櫓を組むためにみんなが規格品の材木を持ち寄っているからです。(中略)そこへ変な木を一本入れると、いきなり思わぬ方向に倒れる。そこから新しい展開が見えてくる」との指摘に思わず膝を叩いた。2015/01/19
マウンテンゴリラ
1
まず、黒鉄ヒロシ氏の教養の深さには正直驚かされた。単に歴史に造詣の深い知識人であるばかりでなく、あの西部先生に教えを乞うだけではなく、互いに影響を与え合う存在でもあることが感じられた。自分の教養レベルでは望むべくもないが、このような語りが出来る友人関係に強い憧れを感じた。ただ、正直な感想を述べれば、対談者に対する、気遣い、あるいは尊敬による遠慮からか、西部先生独特の毒気や緻密さが、各方面に散乱し、薄められたようにも感じた。それは措いても、自らを愚者であると見極めた賢者同士の対談として、理屈抜きで楽しめた。2014/11/12
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- 季節風 〈冬〉 文春文庫