内容説明
仏教経典を片端から読破するのはあまりに大変だが、重要な教えだけでも知りたい―本書は、そうした切実な希望にこたえるものである。なかでも、釈尊の教えをもっとも忠実に伝えるとされる、「スッタニパータ」「サンユッタニカーャ」「大パリニッバーナ経」など、原始仏教の経典の数々。それらを、多くの原典訳でも知られる仏教思想学の大家が、これ以上なく平明な注釈で解く。テレビ・ラジオ連続講義を中心に歴史的・体系的にまとめたシリーズから、『原始仏典1釈尊の生涯』『原始仏典2人生の指針』をあわせた一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
esop
61
ダルマー人間が生きるべき道、人の拠り所とすべき決まり/いかなるものを自己であるとか、自己に属するものであるとか見なしてはならない/他人に対しては思いやりをいだき、慈悲の精神をもって実践すべきこと/人生は苦である「思い通りにならないこと」/つねによく気をつけ、自己に固執する見解を打ち破って、世界を空なりと観ぜよ。そうすれば死を渡ることができるであろう/怨みをすててこそ息む。これは永遠の真理である/他人の立場に立って行動するということ、これが世の中が円満に進んでゆくための実践上の原理なのです2024/09/30
Gotoran
56
仏教思想、インド哲学の第一人者、中村元先生が、バーリ語による「スッタニパータ」、「サンマッタニカーヤ」、「大パリニッバーナ経」など、原始仏教の経典の数々を紐解き、原始仏教の時代背景、釈尊の生涯とその教えのエッセンスを非常に分り易く解説してくれている。生き辛さを感じる今の世にも通じる慈悲の心や足るを知る心の大切さなど、釈尊の教えは、生きる上での指針となる哲学としての仏教に他ならない。気付き・学びに溢れた良書であった。2019/02/04
井上裕紀男
40
伝え書き写されたものとは言え、釈尊氏の言葉は思わず唸る。難しい例え話が出てきますが、中村氏の解説が有難い助け舟に。 当時は民衆のことばで語られていたという話が興味深い。難しくしたのは後の宗教家と学者か、なんと勿体ない。「七つの教え」を進めれば戦争も減るし、釈尊氏の「最後の旅」は人生の指針を静かに強く語る。 「ダンマパダ」は自分を大切にしていけるし、「サンユッタ・ニカーヤ」では中村氏の解説が秀逸。 「ミリンダ王の問い」で語られた、生きていく気持ちについては至極納得です。良き聖典と伝承者は正に水魚の交わり2021/06/07
SOHSA
37
《kindle》時間の流れと共に多くの変遷があったように見える仏教の原点を知りたく紐解いた。仏典そのものの解説というよりは、原始仏教の思想を著者の視点で説き明かした入門書といった感。いずれにせよ、現在の日本仏教と大きく異なる点と重なり合う点を理解できたのは一番の収穫だった。2021/08/07
takeapple
35
釈尊の生涯と原始仏典と言われる「スッタニパータ」「サンユッタ・ニカーヤ」「大パリニッバーナ経」「テーラガーター」「テーリーガーター」「ダンマパダ」「シンガーラへの教え」「ジャータカ」や「アショカ王岩石詔勅」「ミリンダ王の問い」の中で初期仏教を理解するのに適切だと中村博士が選んだものを分かり易く解説してくれている本。仏教とは本来、合理的な論理学、哲学なんだということや、普遍的な人間社会の道徳なんだということがよくわかる。創造者としての神の存在や、宗祖である釈尊を絶対不可侵の存在とする考え方とは無縁である。2017/08/22