内容説明
婚活、疲れました。
とんかつの名店情熱とん。看板娘の密かな特技は客の好みと寸分違わぬ味噌汁を作ること。とんかつ屋のコンカツをめぐる4つの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
72
人への気遣いができる女性…いいですね。自分が持っていないから余計にそう思うのかもしれないけれど、どんなことでも「さりげなく」できてしまう。そんな人がなかなか結婚に至らないのが不思議だった。結婚は気遣いだけではできないことなんだな。自分の人生をこの人と歩みたいっていう強い想いが無いと。いい人で終わってしまうのかも。情熱とんのサクサク感と、美衣のお味噌汁。ホッと心が和むことができるお店なんだろうな。そのホッと感と婚活とのギャップが私の中で消化しきれず。再読すると少しは美衣に寄り添えるか?2016/06/21
yumiko
64
静かな山間のカツ丼の名店「情熱とん」。看板娘である美衣は婚活中だけれど、なにか訳あり…楽しい婚活物語かと思ったら、ちょっと違う感じ。古きを大事にして、気働きができて、しかも可愛い…男性陣は放っておかないはずだけれど。本当に結婚したいの?捉えどころがないなあと思っていたら、そういうことか…周囲がどう言おうと、結婚はやっぱり心が大事。したくなければしなくていいとおばさんは思うよ。自然と家族に囲まれて、美味しいお味噌汁を作りながら自然体でいてほしい。景色の描写も美しい、一風変わったおっとり婚活物語。2015/11/21
しょーくん@本棚再編中
56
★★★★★★☆☆☆☆婚活をテーマにしていますが、ゆる〜く流れる感じで、ほんわかとした家族愛が伝わってきて、温かい気持ちになれるストーリーでした。それ以上に、「さくさくかつ丼」食べてみたいなぁ。2016/01/15
R
45
トンカツに対する描写が秀逸な小説でした。内容はトンカツと婚活をかけた駄洒落的なものと思わせておきながら、読み進めると主人公である女性の人生について、決断と葛藤を描いていてしんみりしました。どうも感情移入できないというか、行動と内面に随分剥離があるなと不思議に思いつつ、最終章でその理由が明かされるというか、唐突に理解できて腑に落ちました、違和感はわざとだったと感じたところ。明るい楽しい話ではないのだけども、前に進む姿が見えるようでした。2016/03/07
も ち@病気療養入院中のためオヤスミしています。
35
読むと「トゲトゲしている心」が心が丸くなるような心が喜ぶ作品。名物「さくさくかつ丼」と、主人公の美衣が作るおみそ汁が提供されるとんかつ屋の「情熱とん」。美人看板娘の美衣が「婚活」を始めるのだが、なんとなく消極的な感じ。特に大きな事件もなく、ひたすら穏やかさに包まれて話は進む。この話、「悪い人」という存在が登場しないのだ。それでも物語は成り立つ。美衣が婚活を始めた理由までこんなに優しいものだったとは。様々な伏線を張りめぐらせておいて、回収しないままの終わり方だが、それが逆にいろんな想像を膨らませてくれる。2015/12/24