内容説明
火星隕石に生命の痕跡が見つかった。世紀の発見を取材する記者・小日向に“ルカの末裔”と名乗る隕石論文の偽装告発メールが届く。研究室には、偽装疑惑の教授の遺体と、方舟型に固められた隕石が残されていた。火星隕石が秘めた、地球生命の“出身地”。偽装が隠す真実とは。すべての謎の証明は“天才”百地教授に託された! 東大院卒作家が研究の栄光と暗部を描く、傑作理系ミステリ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
149
冒頭の液体窒素による殺人事件から中段のサスペンス、意外な動機と犯人という本格ミステリの正統な展開に、伊与原作品では最も忠実に従っている。パンスペルミア説を証明する可能性のある火星隕石を巡る科学の謎を核に、科学者の名誉欲や金銭欲が絡む汚れた思惑が明るみに出るプロセスが面白い。しかも天才と称された惑星科学者が、飄々とした姿で名探偵ぶりを発揮するのだから。最近は科学をテーマにしつつ青春・人情小説へ傾斜している著者だが、ミステリを書く才能は一部の専業作家より優れたものがある。ぜひ今後もこの方向を深掘りしてほしい。2025/07/22
papako
55
『る』から始まる本を探していて、気になって。火星からの隕石を巡り、論文の偽装告発、殺人がおこる。隕石の調査や解析等々、専門的な内容が多く、ちょっと読みにくい部分もありますが、隕石や生命の起源にせまるロマンが感じられて、なかなか引き込まれました。研究者という人種の悲哀も感じられます。先日読んだ『捏造の科学者』でも感じましたが、『研究』という答えのない世界でがんばる人たちが陥る泥沼がひどく悲しいものだと思いました。次は『ね』2015/11/30
kk
35
辛くて先の見えない生活にもめげず、いつの日にか大発見をモノにしようと自分の研究に打ち込む若きポスドクたち。そんな彼らがアカデミアの黒い側面に曝されて煩悶するなか、哀しい事件が起きてしまうのです。ハードなミステリー・ファンにとっては、ひょっとしたらプロット的に物足りないかもしれませんが、人の生き方や感じ方を描く物語として、kkは惹かれるものを感じました。「天才」百地教授のキャラも面白いし、悲しいストーリーではあるものの、読後感はわりと爽やかでした。2020/08/29
ソラ
35
とても面白かった。ストーリーもそうだけど研究におけるあれこれが散りばめられていてそういう方面でも面白かった。この百地先生と小日向のコンビの続編とか無いのかな。2015/10/24
RIN
30
『お台場アイランドベイビー』『磁極反転』に続き3作目の伊与原さん。相変わらず科学ネタ全開。前述2作がシリアス系だったのに対し、今回はちょっとラノベミステリっぽい軽めのテイスト。科学界のFFP問題と言えばかの有名なST○P細胞事件が記憶に新しいが、本作はその1年前に出されたもの。これを読むとアレは起こるべくして起こったとしか…。人は死ぬがミステリというより、やはり研究者を取り巻く過酷で杜撰な環境を知らしむる社会派。なのにラノベっぽいのは探偵役の”天才”百地教授にひふみんしか思い浮かべられないところ(笑)2018/02/06
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