内容説明
キリンの斑模様は何かの割れ目と考えることができるのではないか.そんな論説を物理学者が雑誌『科学』に寄稿したことに生物学者が危険な発想と反論したことから始まった有名な論争の顛末は? 現在の科学から論争の意味と意義を評価する.主導的な役割を果たした寺田寅彦の科学者としての視点の斬新さ・先駆性が浮かび上がる.
目次
目 次
はじめに──なぜいま「キリンの斑論争」か……松下 貢
第Ⅰ部──発端
キリンの斑模様に就いて……平田森三
キリンの斑模様に関する平田氏の説に就きて……丘 英通
再びキリンの斑模様に就いて……平田森三
キリンの斑模様に就いて(3)……平田森三
生物と割れ目……寺田寅彦
割れ目と生命……寺田寅彦
第Ⅱ部──現代科学との関わり
キリンの斑論争と非平衡科学……佐々真一
割れ目……佐野雅己
風紋と砂丘……西森 拓
キリンの斑論争と現代の分子発生学……近藤 滋
解 説……松下 貢
あとがきにかえて──寺田寅彦が伝えたかったこと……松下 貢
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トムトム
24
タテジマキンチャクダイのシマシマは、年齢とともに本数が増える(1995年)は知っていた。でも、そこにいたるまでに「キリンの模様はひび割れた田んぼの泥にそっくり」(1933年)から続く壮大なストーリーが!胎内で胚が成長する時に皮がひびわれて、キリンの模様になるんじゃないか?と疑問を投げかけて、様々な分野の人が喧々諤々の論争に!最初は読みにくいけど、後半はドラマティックでした!アラン・チューリングも出てきます!2020/04/06
calaf
17
キリンの斑模様に関する論争...約80年前に、そんなものがあったのですねぇ...当時は世界でも珍しい思考だった寺田寅彦のグループと、他のグループとの間の論争で、感情論に発展して有益な議論はできなかったようですが。それにしても、寺田寅彦の先見性(?)ってすごいですねぇ...2014/02/14
maghrib
8
面白かった。1933年頃に寺田寅彦門下生の物理学者が提案した、キリンの斑生成要因仮説を中心とした論説集。斑の生成は1952年にチューリングが提唱した反応拡散モデルで説明できること、さらに1995年に近藤滋が熱帯魚表面模様で実際に確認したことを述べる。「中谷宇吉郎随筆集」に載っていた寺田寅彦の生命と割れ目の研究が、近藤先生の「波紋と螺旋とフィボナッチ」のチューリング波とつながる話(対称性の破れ/パターン形成)と初めて知った。上記お気に入りの2冊をつなげてくれた本。その他佐々先生の非平衡力学に関する論説も。2025/01/18
AZUKI
6
P38「猫の斑紋に関する観察」がとても面白かった。家にいる猫を観察しながらふむふむと読んだ。2014/06/13
羊男
5
キリンの体の斑は泥が干上がったときの割れ目と酷似している。それを科学的に説明しようとした論争の記録。1930年代だからもう80年も昔の話だ。馬鹿にした生物学者に対して、寺田寅彦がいまの非線形科学に通じる論考がとても論理的で説得力があったことの斬新さが浮き上がって見える構成になっている。今もって日本に寺田寅彦のような科学者のエッセイが日本語で読めるのは、幸運だと思う。2016/10/04
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