VTJ前夜の中井祐樹

著者名：増田俊也【著】

イースト・プレス（2015/11発売）

• ISBN：9784781612706

内容説明

平成元年(一九八九年)四月。まだ雪が残る北海道大学キャンパス。十八歳の柔道未経験、白帯の青年が柔道場に見学にやってきた。札幌北高校レスリング部出身の中井祐樹であった。中井は増田俊也ら上級生による関節技のデモンストレーションに感動し、その場で入部を決める。六年後、北大柔道部を引退後、大学を中退してプロ格闘家となった中井は、一九九五年、日本武道館で行なわれたバーリトゥードジャパンオープン95(VTJ95)という過酷なワンデートーナメントに一七〇センチ、七〇キロという小柄な身体で出場、北大柔道部で身に着けた寝技を武器に戦っていく。ヒクソン・グレイシーから「サムライ」と呼ばれた男が得たものと、失ったものとは──。格闘技史に残る伝説の大会を軸に、北大柔道部の濃密な人間関係を詩情豊かに謳いあげた表題の『VTJ前夜の中井祐樹』。さらに、天才柔道家・古賀稔彦を八年かけて背負い投げで屠った堀越英範の生きざまを描いた『超二流と呼ばれた柔道家』、東孝、ヒクソン・グレイシー、猪熊功、木村政彦ら、生者と死者が交錯する不思議な一夜の幻想譚『死者たちとの夜』、そして巻末に北大柔道部対談を併録。人間の生きる意味、生き続ける意味を問い続ける作家、増田俊也の原点となる傑作ノンフィクション集。大宅賞&新潮ドキュメント賞をダブル受賞したベストセラー『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』、自伝的小説『七帝柔道記』に続く、「柔」三部作の完結篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[山田太郎]

七帝柔道記が本当の話とはとても思えなくて困るというかここまでやってる人がいるのかと思わないではないけど、面白くて困る。話が短いので、もっと長いの読みたくなりました。

2015/02/02

[やっち＠カープ女子]

栄光なき努力家たちのノンフィクション。こんな事実があったとは、一編読む度に凄まじい衝撃、鳥肌が立った。マイナーな世界だが著者が身近にいたからこそ文章となり世にでたのだ。そして著者と｢七帝柔道記｣の元主将の思いやりに溢れた対談に胸が熱くなった。

2016/08/11

[藤瀬こうたろー]

「七帝柔道記」の著者である増田俊也氏の後輩に当たり、北大柔道部を１２年ぶりの栄冠に導いた中井祐樹の「バーリトゥードジャパン」という総合格闘技の黎明期において行われた大会に出場した話を軸に、中井という男の生きざまが短編として描かれている。当時、私は格闘技ファンで、中井のことはシューティングの選手であることは知っていたが、高専柔道のことは知らなかったし、かなり後までゴルドーとの闘いで失明したことは知らなかった。他に２編の短編を収録。しかし、増田さんは陽の当らないところで頑張っている男の情念を描くのがうまい。

2024/09/06

[ガットウ]

★★★★4.2点。『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』はホントに凄い作品で、その熱で増田俊也さんを追いかけてるワケだけど、自分が書かねばという使命感があるのは作家として幸せな事ですね。

2024/06/09

[暁人]

『木村政彦〜』『七帝柔道記』に続く格闘技ノンフィクション。▼どの話にも共通するのは、半端ない熱さ。常人と違うのは、体力、技術もさることながら目的に向かうためのとんでもない精神力だと思う。中井祐樹も良かったけれど、あの古賀を投げた「超二流〜」の話はもっと良かった。▼筆者も含めて皆「愚直」という言葉かぴったりくるが、何だかそれが妙にかっこいい。もっと読みたかった。

2015/02/03