内容説明
武蔵と小次郎、ふたたび相まみえる! 「巌流島の決闘」から6年。じつは生きていた佐々木小次郎が、宮本武蔵に再び果たし状をたたきつけた。二大剣客の因縁の対決の結末は? はたして人間は憎しみと報復の連鎖を断ち切ることができるのか――。笑いと感動の中に、9.11以降、21世紀の世界が抱える普遍的な問題を浮き上がらせる、井上ひさし晩年の傑作。蜷川幸雄演出で、ロンドン、ニューヨークなど世界各地で上演され大きな反響を呼んだ名舞台が電子版戯曲で蘇る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
237
井上ひさしが亡くなる1年前の初演。この後には『組曲虐殺』を残すのみ。タイトルの『ムサシ』は、あの宮本武蔵。他に佐々木小次郎はともかくとして、柳生宗矩や沢庵までもが登場する。結果的には、こうした主役級を揃えすぎたがために、やや焦点がぼやけるという欠点を生じさせてしまったようだ。また「殺すな」、「死ぬな」のメッセージ性が強すぎることが、逆に劇としての弱さになったことも否めない。井上は既に自らの死を意識していたのだろうか。剣法素人の4人が小次郎の剣術指南を受けるあたりの軽妙な動きが、舞台での一番の見せ場だろう。2015/07/17
新地学@児童書病発動中
125
井上ひさし晩年の戯曲。宮本武蔵と佐々木小次郎の一騎打ちを軸にしながら、暴力による憎しみの連鎖を断ち切る方法が探られていく。この作者らしいユーモアと趣向もあって、特に結末で明かされる一部の登場人物たちの意外な正体には驚いた。非暴力という主張が強すぎて、やや説教くさくなっているのは残念だが、平和に対する祈りのような作者の想いは十分に伝わってくると思う。2016/02/10
やよ
10
舞台「ムサシ」。過去に数回観劇してるけれど台本を読むのは初めて。武蔵と小次郎の舟島決闘6年後の物語。恨みの連鎖を断ち切ろう、生きよとの亡霊たちからのメッセージが続く。特に響いたのは、死んでから後悔しても遅いということ。今月、数年ぶりに観劇予定でこれが最後になりそう。よい備えができた。2018/03/06
34
6
舞台は初演から4回観劇しました。理由は、毎回小次郎役が変わるし、そもそもこの戯曲が好きでした。 読んだら、観に行きたくなりました。井上ひさし✖️蜷川幸雄の新作は観れない事は残念ですが、再演したら必ず行きます。 巌流島から始まる奇想天外の話。「憎しみの鎖を解き放てる」 最後の筆屋乙女の台詞が心に響きます。(積読本)2020/11/17
マカロニ マカロン
6
個人の感想です:B。井上ひさしの戯曲を蜷川幸雄の演出で舞台化。お二人ともすでに故人だが、映像で一部だけ見る機会を得て読んでみた。巌流島の決闘で、吉川英治の『宮本武蔵』最後の一行を受けて、小次郎が手当てを受け生き延び、6年後、武蔵との再決闘をするためついに鎌倉の小さな禅寺にたどり着く。そこには沢庵和尚や柳生宗矩らがおり、2人の決闘を止めようと画策する。この劇の最大のテーマは「復讐の連鎖を断ち切る」ということ。2001/9/11以来アメリカとイスラム国の報復の連鎖を意識して書かれたものだろう。2018/10/31