内容説明
コーポ中里――。枇杷の木が茂る四階建ての古い鉄筋アパートには八世帯が暮らす。二十数年前、母子家庭の幼児が行方不明となった事件に、住人たちは誰もが口を閉ざす。苦しみを背負い、ひとり住まいのままこの世を去った女は、何を思い、どんな風に生きてきたのだろうか。家族の愛憎と、人間の身勝手さ、生きていくことのままならなさを描く、注目の作家「カトゲン」の、ざわめく新しい世界!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
99
兄弟のために尽くしてきた姉・・疎遠になってから、変人扱いされ、たった一人で亡くなった彼女が姪に託した『失った我が子を探して!』の願い。狭いコミュニティの中での出来事。上手く隠したつもりでも、どこからか誰かが見ているものだ・・真相が明らかになる時、各自が抱えている問題も露呈して今全てが曝される。その伯母もピンポイントで各人と関わり、大切な言葉を残していたのだった。こう云う『お茶会』はご遠慮したい!が、それが『足掛かり』となったんだなぁ。『嫁の遺言』以来の加藤元。なかなか面白く一気に読了。2015/08/15
優花 🍯モグモグ
92
古びたアパートに暮らす住人たち。それぞれに心の闇が見え隠れ。読んでいてグッタリしてしまいますが母親が我が子を想う気持ち。切なくやりきれない作品でした。2016/10/26
papako
76
ほっこり連作短編集なのかと読み始めたらミステリーでした。伯母が残した四階建ての四階の部屋十号室に越してきた詩乃。そこで伯母の秘密を知る。住民たちのお茶会、明かされる秘密。最後は悲しい発見。伯母さんもいい人ってわけでもなくて、すごくリアルな反面、そんな!と思うところもあり。ちょっと不気味なお話でした。2020/05/08
taiko
76
鉄筋4階建て、8世帯の暮らすコーポ中里。亡き叔母の後に、十号室に暮らすことになった詩乃は、在りし日の叔母の秘密を知ることとなった。先入観なく手に取り読んだので、まさかのミステリーで驚かされました。各部屋の住人の目線で語られる各章で、謎に近づき、解明する感じが面白かったです。それぞれの母の愛が招いた悲劇。悲しい事件でした。2016/03/03
ゆみねこ
75
一人暮らしをしていた伯母が亡くなり、彼女が住んでいた古いアパートの部屋を受け継いだ姪の詩乃。4階建て、わずか8室のコーポ中里は築40年の古びた建物、そして濃密な人間関係の残る場所だった。十号室で暮らした伯母さんの生き方が切なくて悲しくて、居なくなった我が子を待ち続けた生涯。それを忘れたように暮らした住人。読み終えて表紙の表と裏を見ると、重く暗いビワの木がとても印象的でした。2015/11/28