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内容説明
武士の家に育った内村は、進学した札幌農学校で半ば強制されるようにキリスト教に入信する。しかしその懐の深さに心を打たれた彼は、仲間たちとともに自分たちの教会を建てるにいたる。やがて真のキリスト教国をその目で見ようとアメリカへと単身旅立つが……明治期の青年が異文化と出会い、自分自身と国について悩み抜いた瑞々しい記録。(解説・橋爪大三郎)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
92
瑞々しい異文化の出会いとそれを自分の血肉にするまでの記録。武士の子として生まれた内村鑑三。学校に通うようになった時、半強制的にキリスト教に入信する事になる。戸惑いながらも教化に馴染み、楽しくも実りのある青春時代を経て本場の地、アメリカへ。しかし、そこは人種差別や禁酒法時代にも関わらず、聖書の教えに背いた事が横行していた。その事にショックを受けた作者が家族をキリスト教徒とさせた事を悔いる記述に苦悩が満ちていて、こちらも悲しくなる。だが、彼を幻滅から救ってくれたのは、その地にいる人々のアガペーでもあったのだ。2019/06/01
優希
75
内村鑑三がいかにして信仰を持ったかが書かれています。アメリカに旅立ち、真のキリスト教を見つめた姿には多感な青年であることが伺えました。キリスト教にのめり込み、現実を見つめ、足跡を振り返ることでキリスト教を俯瞰的に見つつ、己の信仰を生み出していった姿には共感と反発を感じましたが、内村はあくまで日本人的キリスト者であり、その信仰も特定の宗派に染まらず、日本独自的に展開していこうとしたのが伺えました。常にキリスト教と向き合ったからこそ歩んだ道があるのだと思います。内村鑑三の人物像を改めて知れて良かったです。2016/01/04
壱萬参仟縁
62
この前洋書で買っておいた本のAmazonからの購入。前、注目していた箇所を改めて英語と日本語で対応させると、自分の読みは正しかった。本質がよくわかったから。他の洋書もこういう読み方があればと思う。古典と現代語訳も然り。生徒のときにそうしていれば、学力が上がったろうに…。2024/02/22
優希
49
再読です。内村鑑三がいかにしてキリスト教と出会い、信者になったかが述べられています。多感な青年であったからこそ悩み、自らの信仰をつかみとったのですね。あくまで日本人的キリスト者であり、その信仰も特定の色に染まらずに展開して行こうとしたのでしょう。改めて内村の信仰はキリストと向き合い、歩んできた信仰なのだと思いました。2023/09/13
molysk
28
内村鑑三は、明治大正期のキリスト教指導者。武士の家に生まれ、札幌農学校で洗礼を受け、東京での布教、そして米国留学へ。本書は、内村が半生を振り返り、著述したものである。聖書の記述や、米国での慈善家らとの交流に深く感銘を受ける一方、宗派間の対立は戸惑いのもととなった。また、米国での滞在中も、故国への想いは心を離れなかった。内村はのちに、教会によらず、聖書を信仰の拠り所とする、無教会主義を提唱して、日本人としてのキリスト教徒を目指した。それは、明治期の日本で西洋との価値観と対峙した、文化人の一つの結論である。2019/12/15