内容説明
四面楚歌の状況下、すがりついた一冊の本─。爾来、藤澤清造の歿後弟子としての運命が拓ける。
葛西善蔵論として卓越な「凶暴な自虐を支える狂い酒」、独得な筆致によるヰタ・セクスアリスの色慾譚」など、無頼、型破りな私小説作家の知られざる文学的情熱が満載された、芥川賞受賞前後のエッセイ集。【本書は、『随筆集 一日』を再編集、改題したものです】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワニニ
55
こんな…中年男の「色慾譚」を電車で読んでいる私、なんだかなー。しかし、西村賢太にしか書けない微細な記録は見事。いろいろ盛り沢山な一冊だが、小学生宛の文章には頬が緩む。ふてぶてしく、自虐的で、キレやすいのは、繊細かつ温かみある性格の裏返し?うーん、そこまでイイ人にしなくて良いか。 2015/06/17
あらたん
52
自分を曝け出す勇気、書かれている内容は確かに低俗でゲスなのだがここまで曝け出されると逆に清々しく思えてくる。解説の「そうとしか書けないという私小説の苦しみは、そうとしか生きられない私たちの苦しみである。」が心を打つ。村西とおるの「死にたくなったら下を見ろ。俺がいる。」を思い出す。自分の弱さを受け入れて生きるしかないがどんな自分であっても役に立てることがあるのでは、と何故か前向きな気持ちになれる。2024/01/28
澤水月
10
東スポ連載の艶話「色慾譚」が白眉、性の目覚めと中年超え賞取ってからのエロ本処分の苦吟(笑)など。「西村賢太風俗3P」とデカい見出しをつけられた逸話は無かったような。意外に淡々とし読み苦しくない。他は受賞前後雑文。単行本にある受賞前夜の「一日」は文庫に無い2023/03/11
のけつ
10
藤澤清造や田中英光への並々ならぬ思いや氏が私小説書きへと至る道程を記した前半部も興味深いが、後半のエロにまつわるエッセイ集「色欲譚」が抜群に面白い!いい歳したおっさんがひたすら性欲を満たすことに一生懸命笑。多汗症のせいでデリヘル嬢に嫌がられたり数百冊のエロ本に囲まれながら自慰に耽ったり。自虐的かつ知的な文章でバカバカしいと思いながら共感もしてしまう。読後は妙にスッキリとした心地よさが残った2015/06/14
スナフキン
9
著者の芥川賞受賞前後のエッセイ集。私小説に関するものはとても面白く、自分までも昔の私小説を読みたくなる程だが、後半の女性に関するエッセイは男である自分が読んでも不快だった。著者をエレガントだと評する解説の小島慶子の見解にも疑問を感じた。2021/12/14