内容説明
戦前、歓呼の声で宰相の座についた公爵は、終戦直後、戦犯に指名され自死を選ぶ。今なお歴史的位置づけが揺れ動く近衛文麿の思想の軌跡を綴った手記六篇「最後の御前会議」「平和への努力」「近衛上奏文」「世界の現状を改善せよ」「戦後欧米見聞録」「英米本位の平和主義を排す」を集成。〈解説〉井上寿一
感想・レビュー
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ホン
5
近衛文麿筆の昭和史ということで読んでみた。当事者とあって主観で述べてるのが良い。やはり日米開戦前の動きに関心がいく。必死になって対米開戦を回避しようとするが首相であっても掌握すことができない軍部、アメリカにしても支那からの軍部の完全撤退が実現しない限り和平交渉に応じようとしない そんなジレンマを抱えながら近衛内閣解散。イライラしたり憔悴しきったりの心の変化が読み取れる。2015/10/14
くらーく
1
んー、アメリカとは戦いたくなかったのだよねえ。それでも、開戦してしまった訳だ。どうしてだろうねえ。陸軍と庶民の圧力のように読み取れるけど。 アメリカとの戦争は回避できたように思えるけどなあ、本書を読む限りでは。2016/07/01
秋津
1
「英米本位の平和主義を排す」から「近衛上奏文」「平和への努力」まで、近衛文麿の主要な手記をまとめた一冊。とかく辛辣に評されがちな近衛の政治・外交観を知る上で重要なものばかりでお得な感じ。留学して「日本はこういうところが遅れている」とか言い出す人のようで何となくにやっとしてしまう部分のある「戦後欧米見聞録」は単純に読み物としても面白いなと。古川隆久先生の『近衛文麿」と併せて読むときっと楽しい。後は対米交渉の際の松岡洋右外相が「そんなに?」と思うほど独走していて、そのうち彼に関する本も読んでみようと思うなど。2015/11/23