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内容説明
「実存哲学」は専門知を利用しながらそれを超えた思惟である、と説く。
その思惟を手にして人は人にならんとする、現代「実存主義」の基礎文献。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
加納恭史
20
さて、ハイデガーの実在論は良いのかなと思っていたが、ニーチェの悲観論の影響が大きいのて、疑問をもった。その辺りはどうなのか?この本でゆっくり考察する。ハイデガーは「存在と時間」で人間存在を存在論的に究明する。もともとの存在論は「実在的」であり、キルケゴールとニーチェの系譜があった。ヤスパースとハイデガーはキルケゴールの実存から出発した。ハイデガーはやはりニーチェの影響が大きい。ヤスパースは「実存」とは「本来的な自己存在」と捉えて、「自我自身」つまり「私自身」である。そこから身体的自我や社会的自我問う。2023/12/04
柳瀬敬二
12
ヤスパースの実存哲学は一人では実践できない、実存へと至る道程の中で、交わりKommunicationが大きな役割を果たしているからだ。限界状況の中で現存在から抜けだした人と人が、「対等で胸襟を開いた腹蔵なき状態での愛しあいながらの争い」を通じて実存へ至ると言及されている。ヤスパース本人が念頭に置いていた他者とは、ユダヤ人であった妻のことなのだろうか。 我々が生きている限り交わりにも実存にも終わりはなく、ただ唯一死によって完成される。2016/08/20
やまやま
10
「いかに生きるべきか」という問いかけが常にあるという視点からヤスパースを読んでいる。解説の中山剛史先生の表現を借りれば、われわれが現存在として生きている限り避けることができず、必ず突き当たって挫折せざるをえない(例えば争いや死)という「壁」のような状況を「限界状況」と呼ぶが、それに対して逃避したり忘却したりせず限界状況を直視せよ、ということを再確認。実存主義はこのように「孤独」へはかりを傾ける傾向があるが、ヤスパースは一方で「交わり」として普遍的な共同の生を追求する。合理的な発想には見えないかもしれない。2019/06/11
かんがく
10
試験勉強で主な部分だけ拾い読み。死、争い、苦悩、責めなどの人間である限り避けられない「限界状況」から目をそむけずに受け止め、かけがえのない優越性を排除した自由で対等な「実存的交わり」を行うことで、「実存」(本来的な自己)になることが出来る。哲学において孤独な思索でなく、コミュニケーションを重視し、他者との間でしか真理は求められないという考えが彼の特徴か。2017/01/29
いとう・しんご
6
「可能的実存として、私が本当に現実的に存在するのは、ただひとえに、私が現存在しつつ現象し、現象のうちにありながらも、しかし現象以上である場合に、限るのである」P381。キリスト者としては、此岸的現存在として儚き現象でありながらも、終末を待望する実存にあるなら現象以上であり得る、と読みたいところ。難しい本だけど聖書の隣に備えたい一冊。ただし、最後の8章と9章が抄訳なのが残念。それでも、少し回り道した後、再読したい。2021/12/15
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