内容説明
地獄の天上の向こうに、高くて青い空があったら。それは地獄で暮らす鬼たちにとって、救いか、報いか。ここは説法に耳を貸さない民衆に僧侶が、美しいものに醜いものが、鬼となり罰を与える場所。そんな地獄に堕ちた女郎の願いは、蜘蛛(くも)になること。日誌を書く役目を与えられた彼女が見つけた何か、とは。(講談社文庫)
目次
その一 拝啓、閻魔様。
その二 賽の河原のバベルの塔。
その三 蜘蛛を喰らふ。
その四 血の池地獄で釣り上げて。
その五 竜が愛した売女。
その六 或る救い。
その七 挙げ句の果て、死出の果て。
その八 彼岸に完全に渡れる者。
その九 閻魔と鬼蜘蛛。
その十 追伸。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
75
読友さんのレビューを読んで。「人を呪わば穴二つ」とはよく思う。被害者でも、深く怒り呪うことで自分自身を呪縛し、心が晴れることはない人がいる。その呪縛を解くものは自分しかない。著者はそれを地獄での成仏として描いている。文章が上手いわけではないのだか、時々鳥肌が立つような箇所があった。解説を読み、これが著者の処女作、その後の開花を周りが待っているのだと思う。その期待に応えろよと言うエールなのだろう。2014/09/20
UK
23
開いてみて思わずにやり。読友某さんの勢いとちょっと似てる。イキのいい姐さん口調で地獄の有様が語られる。表題は蜘蛛に変化させられて鬼の番人となった元花魁の日記の意。凄惨な地獄の描写を読んでいるうちにふと気づく。結局この世と同じなんだ。人の妄執が亡者を作り、怨念が鬼を作る。住人が変わらぬのなら地獄もこの世も同じこと。遊女の地獄日記はそのまま現世でのあがきと苦悩を語っている。生前は空(クウ)になりたいと死を選んだ彼女が地獄で最後に至った境地。皮肉とも慈愛ともとれる閻魔の沙汰は生命の因果を含み、読後の余韻は長い。2014/08/27
昼と夜
11
最近は人が死ぬと他の人の思い出になる…的な考えでいたから、地獄を舞台にしたこの本を読んであぁそうだった、そんな考え方もあったね。と変なところで我に返った。だけど、ツライ思いに耐えて一生懸命生きた末、地獄で亡者になったり、鬼となって何かにとらわれたりするのはイヤだなぁ。せっかくだったら鬼蜘蛛が求めた空になって無としていたいなぁ。2012/08/31
simasima
8
人から勧められ、表紙からライトノベルなのかなって軽い気持ちで読み始めたらノックアウト!全然ライトじゃな〜い!ドロドロエグい地獄という設定の面白さもさることながら、主人公の描き方が多層的で味わい深い!空と風の描き方には、心がざわついた。空(クウ)になりたいと願った鬼蜘蛛の怒りの底にある慟哭が、風に吹かれ空に流れ…。出会えてよかったと思えた一冊!大切に読み直していきたい。S
ケン五
6
あまり読んだことにない感じの話だったけど、最後まで読むと分かってくる。そうだったのか。青空とそよ風。そうだね。2011/05/03