内容説明
まだ太平洋戦争の傷が残り、人々の気持ちが殺伐としていた時代。アカネ、アリー、ワシオの三人の少女は貧しいながらも、それぞれの想いを胸に抱え、逢坂にある退役婦人養生院で働いていた。 大人の都合に翻弄される彼女たちは、厳しい時代の中でも、自らの道を切り開いていこうと懸命に進んでいく──。 大人であれば我慢することにも「間違っている!」と真っ直ぐに言える純粋な心。周囲からは煙たがられるけれど、それは希望に満ち溢れた子供たちの特権。そんな眩しい光に包まれた少女たちを、奇才・牧野修が感動的に描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆kubo
17
しまった、前作があったのね。これだけでも読めるけど、よりオリジナルの世界観を楽しめたかも?アカネ、ワシオ、アリー等老人ホーム的な施設で働く少女達のそれぞれの話があって、ラストは三人で力を合わせてカヌーレース的な祭りに参加する流れ。最初は違和感があった三人で笑い合う挿絵が最後にはしっくりきました。老婦人逸子さんがかっこいいので「大正二十九年の乙女たち」も興味あります。2014/08/10
ささやか@ケチャップマン
13
やっぱり牧野修好きだわーってなった一冊。素晴らしかった。この人はグロテスクホラーも書けるがこういう真っ直ぐな青春系も書ける。まず、戦後も米国支配が継続するパラレルワールドな日本、という設定だけでおいしい。その上に、三人の少女を中心とした友情を書いていて、それがとてもよく書けている。一応世界観を共通とした本作以前の話があるが、主人公らも異なる別個の物語なので読んでなくても何ら問題ない。最後の影が落ちた感じは、作者らしさなだけかもしれないが、次作を意識してなのかもしれない。もっとも次作が現状出ていない。2016/12/05
Nanami
10
面白かったです。けっこう分厚めですが、セリフも多く、文章も読みやすく、楽しめました。パラレルワールドな戦後の青春小説。きらきら輝く少女たちが眩しいくらいです。たしかに馬鹿なほどにまっすぐな人間ってときどき苛々することもありますが、憧れます。楽しい時間は永遠には続かない。最後がすっごく気になります。続きがでるのかな。前作が未読なので、読んでみたい。2014/05/28
記憶喪失した男
7
舟遊びと喧嘩。題名がよい。2018/10/18
ファーラス
6
架空の日本を舞台に、向こう見ずな少女たちの元気いっぱい一生懸命な物語。……が、全体を覆う社会不安や人間の悪性などは「傀儡后」のような暗くて重たいもの。ときおり吹出す瘴気がああ牧野先生だなぁと思わせる、お気楽だけではないパンチの効いた小説。パンチ小説お気楽風味という感じ。「大正29年の乙女たち」とは繋がっているそうなので、そっちも読まないと全体は見えてこないのかも。2014/06/11