内容説明
維新ドラマの裏に隠れた志士の激烈な生涯
松陰のもとで学び、維新志士として、信念を貫く明治の政治家として「暴発」しつつ活躍した品川弥二郎の生涯に光を当てる歴史長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
89
幕末志士の物語は数ありますが、品川弥二郎の物語というのは滅多にないのではないかと思われます。松下村塾の門下生の中でも松蔭に特に愛されていたようですが、どうも印象が薄い人物という印象しかないですし。なので、改めて弥二郎の物語を読んでみると、松蔭と重なる精神があり、とても興味深いなと。幕末維新から明治時代にかけて奔走した末、選挙干渉という汚名を抱く晩年までの生き様は殆どが知らないことばかり。今では当たり前の協同組合も弥二郎が生み出したとか。2017/03/29
木賊
10
世にも珍しい品川弥二郎の伝記小説。松下村塾時代から、悲願だった産業組合法案が貴族院を通過した直後に亡くなるまで、駆け足気味ながら一通り描かれている。「空前絶後の」選挙干渉についても正面から扱い、「やむにやまれぬ大和魂」との解釈を加えている。官僚としての事績についてはあまり知識がなかったため、非常に勉強になった。 2016/07/17
やつぽん
1
幕末の小説はよく読むけれど、品川弥二郎にスポットが当たっているものは初めてだった。吉田松陰を師として仰ぐ弥二郎はまっすぐで潔癖で「やむにやまれぬ」狂気の持ち主。吉田松陰が処刑され、禁門の変で同志の久坂玄端を亡くしたことを経てますます、残されたものとして成し遂げたい志を強めていく。「空前絶後の選挙干渉」の汚名ばかりが目立つ弥二郎が、国民の生活基盤となる協同組合を実現させるために奔走し命をかけた男だったと知らなかった。2015/10/15
かえちゃんマン
1
品川弥二郎、名前は以前から知っていましたが、幕末明治期にやり遂げだ偉業に関してはあまり知りませんでした。駆け足で彼の人生を描いた本ですが、彼を知る最初の一歩としては充分だと思います。2015/09/08
左丘明
0
小説というよりも評伝に近い作品。主人公は品川弥二郎。松下村塾で吉田松陰の薫陶を受けた幕末の志士の一人だがどうにも印象が薄く、数多ある明治維新ものでもほとんどが脇役。「トンヤレ節」の作者として著名な程度。しかし、禁門の変をはじめ幕末の風雲を走り抜け、明治に子爵にまでなったのだから立志伝中の人物ではある。その品川に焦点をあて、幕末のみならず、明治期の役人としての活躍、内務大臣として大規模な選挙干渉を行い汚名を負う晩年までを丁寧に描く。初めて知る話も多く、品川が清廉な人柄であり、協同組合の生みの親とは驚いた。2015/12/02