内容説明
地震のあと、日本を捨ててさっさと帰った外国人を“flyjin”と言うらしい。でも自分は、そこから意思を持って逃げるでもなく、意思を持ってとどまるでもない。新しい(らしい)日本の上にぷかぷかと浮いている、ふらいじんだ――。
人々の悩みは変わらない。いつ結婚する、誰と結婚する、子供ができたらどうする、できなかったらどうする、母の遺骨をどうする……。けれどもあれ以来、確実に意識の底に沈んだものがある。そんな悩める人々の日常に誠実に寄り添った4つの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
202
それぞれテーマが違っている短編集でしたが、ぶっちぎりで印象に残ったのは3編目の【母を砕く日】です。妻に先立たれた夫が妻の遺骨を砕き、海に捲き、供養しようとする話ですが、夫の連れ子と亡き妻の連れ子の血のつながりのない兄妹の会話ややりとりが本当に人間味に溢れ、家族っていいなと思わせてくれました。他に震災をテーマにした作品もありましたが、少し控え目に書かれた感のある作品かなと。全部で4編からなる作品ですが、どの作品もごく普通の日常にありながら、誰もが大なり小なり悩める話に、不思議と強く共感してしまいました。2016/02/21
美登利
74
4つの短編。「母を砕く日」は文學界にて読了済み、複雑な関係の兄妹、父親との三人の思いがお互いをさぐり合うようで、でもその中に労りの心があってとても良かったと感じました。震災後の夫婦、家族、友人たちとの関わりを描いていて、あの震災で何が変わったのか、そこに線が引かれてはっきりとしてるわけでは無いけれど、何か違和感を感じつつある登場人物たち。たかみさんの小説はもの凄く変な人がたくさん出てくるのでもなく、日常をかいているだけなのに、つまらなくない。この本のタイトルになったお話の夫婦がとても微笑ましかったです。2015/09/23
さおり
62
図書館本。初めての伊藤たかみさん作品。完全に私の読解力不足が原因ですけど、誰が言った言葉かわからなくなったり、どこにいるのかがわからなくなったりすることが頻発しました。始終「読みにくいなぁ」と思いながら読みましたが、それでもなんか、良かったんだよねー。結局のところ何が言いたいのかよくわからなかったけど(悪いのは私ですが)、大事なことの先っぽだか尻尾だかが、視界の端っこにちらちら見えてる感じの読後です(私の感想こそ、何言いたんかさっぱりやね)。2016/05/19
ねむねむあくび♪
59
図書館の本。伊藤たかみさんの本は初めて。新刊だったので借りてみた。4つのどの作品も、家族や生き方の距離を問うものばかりで、心に残る。どの思いもそれぞれに正しく、ある種の優しさなのだ。取り上げられている問題が、考えさせられるものばかりで、読んで良かった。2015/10/10
pukupuku
52
夫婦とか家族にまつわる4つの短編集。お父さんの亡き妻への愛情が切ない「母を砕く日」が印象に残ったのだけれど,語り手がちょこちょこ変わるので,ちょっと読みづらかった。表紙のイラストが可愛いので、もうちょっと軽い話かなと思ってたら、離婚や病気、子供のこととかお墓問題とか、ちゃんと考えなきゃいけない話だった。2015/09/27