内容説明
戦後日本を代表する哲学者のエッセンス。ものも過去もじかに立ち現れている! 問いと思考の変遷を鮮明に示す論考を、衣鉢を継ぐ4人がセレクト・編集する。大森哲学を知る最良の入門書。解説は4人の共同討議。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
31
手強いな、と思う。もっと日本の/土俗的な思想を練り上げた人なのかと思っていたので、こんなにも読みやすい(ということは、ローカルではなくグローバルに考えた人だと思う)哲学者だったのかと思った。素朴に時間や感情、自己といった対象を遡上に載せて哲学をする。ヒュームやバークリといった哲学者を読んでいなくても、流れについていけば分かった気になる。だが、気になるだけで留まるのはもちろんヤバいことなので、読者としての私はここから大森の「額に汗して考える」姿勢を受け継ぎ、考え続けねばなるまい。フォロワーが多いのも納得する2020/03/18
白義
14
大森入門に最高な、読みやすく見通しを得やすい選集。それにしても、どの文章も徹底的に考えられていて、一見常識はずれなのだけど、読むと不思議と「了解」してしまうものばかりだ。言語無意味論や立ち現れ一元論など、分析的な鋭利さと、それを理解した瞬間現れる超越的な深みが共存している。主観知覚と客観物ではなく、世界は様々な相貌を持って一にして現れ、言葉も意味ではなくそこをさ迷う身振りとして為される。では、その深層にそれらを現す物は何か。大森哲学はそれに語らない2012/04/04
take
4
「流れとよどみ」を読んでから本書を読んだ。この順番が良かったと思う。難しい記述もあったが、落ち着いて2回繰り返しながら読めばなんとか理解できた。知覚風景と科学的描写の「重ね描き」、立ち現われは全て真、「虚想」(=知覚的思い)、「今≠瞬間」など、興味深い話が多かった。2017/06/30
rubix56
3
先の「論理学のすすめ」同様に私は難しすぎる。 2015/01/14
田蛙澄
2
立ち現れ一元論や過去想起説、科学的世界像と知覚の重ね合わせや知覚の因果説批判などいろいろと道具だてが面白くてよかった。だたわりと話についていけなくて、なんでそうなるんだ?それはおかしくないか?と思って納得できない部分も多かった。個人的には虚想のところが興味深くて、虚想は単なる心の中のものではなくて、知覚の全体を形作る不可欠な一部なんだという話は興味深かった。虚想だけど現在知覚の劣化コピーではなく実在ではあるというのは、虚構の存在論につながる可能性を感じてわくわくした。2016/05/29