朝日文庫<br> にぎやかな湾に背負われた船

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朝日文庫
にぎやかな湾に背負われた船

  • 著者名:小野正嗣【著者】
  • 価格 ¥779(本体¥709)
  • 朝日新聞出版(2015/09発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784022647733

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内容説明

とある海辺の集落「浦」に、時が淀み、謎が漂う。教師と恋に落ちた少女、奇妙な昔語りにふける四人組の老人。半世紀あまりの脱線につぐ脱線の記憶と現在の物語…。筒井康隆氏から「少しほめ過ぎになるが、小生は『ガルシア=マルケス+中上健次』という感銘を得た」とも評された第15回三島由紀夫賞受賞の表題作に、第12回朝日新人文学賞受賞のデビュー作「水に埋もれる墓」を併録して文庫化。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。

67
☆5.0 とある海辺の集落「浦」を舞台に織りなされる純文学という言語を借用した御伽噺が2篇収められています。 第15回三島由紀夫賞受賞の表題作と第12回朝日新人文学賞の『水に埋もれる墓』です。2020/12/28

翔亀

40
この作家の小説は癖になる。2001年発表の初期2作品をカプリングした本書は、作家の原点というべきだろう。とはいえ2015年の芥川賞受賞作に至るまで一貫して故郷の大分南部の漁村を舞台にしているので、作品世界の印象はそう変わらない。しかし得てして初期作は、いかにも力作という感じで作家の思いが生のまま伝わってくるものだ。例えば、表題作ではナイル川の部族を研究した民族学者の言葉として「私たちに脱線と思えることは、彼らにとってはそうではない」(p110)。私たちが論理的と考えることが、彼らにとっては非合理なの↓2021/05/31

きいち

26
土着なようで洗練されてるようで抽象度も高くて、複雑な味わい。リョサ?中上健次?違う。この人、他のも読みたい。◇豊後水道に面した複雑なリアス式海岸、点在する浦々のそのどれにあたるかはわからないけれど、舞台である大分県南の蒲江には仕事でしばらく滞在していた。泳いでもすぐに渡れそうな対岸に辿りつくのに忠実に海岸線に沿っていくしかなくて、車飛ばしても30分近く。まちへと結ぶトンネルは便利そのもの、光り輝くショッピングセンター、折り重なった歴史と過疎の爪痕、いわく言い難い雰囲気。自分の記憶が書き換えられていく感じ。2015/04/23

エドワード

22
九州の小さな湾に面した浦。町民が皆どこかでつながっている狭い社会。祭りのような町会議員選挙を契機に、今は年配者となった男女の今と昔が同時並行して語られる。新しく赴任した交番の一家、酒さえ飲まなければいい人・ミツグアザムイ、家にロケット花火を打ち込まれるトシコ婆さんが狂言回しだ。かつて飼われていた豚<緑>と同じ名前の船の字が間違って<縁>になってしまった―私には<縁>こそがこの町の象徴のように感じられる。農業も漁業も中途半端で、漂う閉塞感と鈍感な町民の姿に感じる平穏と哀愁。日本のどこにもこんな町があるよね。2018/04/17

魚53

5
とにかく語りが面白い。表題作は語り手が中学生なのだが、中学生とは思えない表現力で、でもそんなことはどうでもよいというように力強く物語は進んでいく。ちょっとくすぐったいくらいの大げさな比喩とか、居心地が悪くなるほど濃くてキャラの立つ登場人物たちが出てくるし、話もどこからそんな発想がと思うくらい脱線と飛躍の繰り返しだが、自由でのびのびしていて、物語って好きにしていいんだということを感じた。「水に埋もれる墓」はもっとわけがわからない。話についていくのに苦労した。認知症と思われる人の描き方としては斬新。2023/07/09

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