内容説明
日本古典文学中屈指の名文『方丈記』。著者鴨長明が見聞し体験した、大火、大風、遷都、飢饉、大地震などが迫真の描写で記録され、その天災、人災、有為転変から逃がれられない人間の苦悩、世の無常が語られる。やがて長明は俗界から離れ、方丈の庵での閑居生活に入りその生活を楽しむ。しかし、本当の心の安らぎは得ることができず、深く自己の内面を凝視し、人はいかに生きるべきかを省察する。本書は、この永遠の古典を、混迷する時代に生きる現代人ゆえに共鳴できる作品ととらえ、『方丈記』研究第一人者による新校訂原文とわかりやすい現代語訳、理解を深める評言によって構成した決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
108
丈、とは長さの単位で、一丈は約3.03メートル。鴨長明は、一丈四方の庵を結んで、そこに籠もって思索に耽ける。のかとおもいきや、このひと、果敢にあちこち出かけて行くのである。街をねり歩いては災害の規模を、遷都のさまを、飢えに苦しむ民衆を、観察する。著された文章にはいっさいの無駄がなく、簡潔にして明快。学術論文さながらである。実測に基づく数値データには説得力があり、音楽的素養を背景にした文章はリズミカルで美しい。苦悩の果てに到達した、もののあはれ。その精神を体現した方丈の庵は、なんと可動式なのである!2017/10/21
優希
101
冒頭の「ゆく川のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず」の一文からして美しさを感じます。京都の災害や、変化する住まいや生き方がつづられており、平安時代も現代と変わらない風景があって、戦乱や災害などに見舞われた乱世であったのが伺えました。乱世から逃れるように隠遁生活に入っても得られない心の平安は、孤独と自分の内面との向き合いへと通じて行ったのだと思います。混迷する時代に人はいかに生きるべきかを考えさせられました。現代にも通じる随筆として普遍と無情を感じます。2016/07/27
buchipanda3
97
「世に従へば、身、苦し。従はねば狂せるに似たり…いかなるわざをしてか、たまゆらも心を休むべき」。著者が生きた頃は大火や飢饉、大地震が相次ぎ、遷都や争乱もあり混迷を極めた時代。厄災に人は無力で、長明個人としては家族の不幸による不運や人間関係で苦みを覚える日々。この世を嘆き惑い、どんな心持ちで生きるべきかを追い求めた。やがて彼は五畳の方丈庵(移設可能)での暮らしに辿り着く。だがそこでも執着に気付くのだ。そこに解は示されない。しかしこのしなやかで端正な文章は諦念や失望ではなく、己の安息を探求する心を示していた。2024/01/04
佐島楓
46
レポート用の読書。注釈がとても充実しており、論点が明確になった。2016/03/05
Shoji
29
方丈記と言えば、鴨長明の随筆、「ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」で始まる、中世の文学、この程度のことしか知らなかった。今回、初めて通しで読んだ。私の場合、古典を読むと大概疲れて、へとへとになるがこの方丈記は違った。すらすら読めた。原文、訳文、訳者による評となっており、理解しやすい構成だった。鴨長明は、自然災害や飢饉や醜い騒乱を嫌悪し、山中に隠居し最低限の暮らしを全うした。現代の地震津波、コロナ、与野党の争いと通じるものを感じた。一読しておいて損はないと思う。2024/04/21
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