内容説明
親戚の家からゆずりうけてきた、古い紅い箪笥。年ふりたそのひきだしからは、時に不思議なものたちがあらわれる。そして箪笥によばれるように、この界(よ)ならぬ人びとがわたしを訪ねてやってくる――。現実と非現実のあわいの世界をたゆたうものものを細やかな筆致で描き出し、著者の新境地を示す連作小説集。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
130
この世界観好き!の一冊。箪笥が結ぶ現実世界と異世界の物語。親戚から譲り受けた古い箪笥。空っぽなのに、四、五人分の重さがある…。という出だしに思わず箪笥に本によばれたかというぐらいの快感。巡る季節と共に箪笥の引き出しが呼び寄せるものはずばり、この世のものではないもの。それを異なものとは捉えない姉弟のさま、自然さが心地よい。言い伝え、慣わし、遠い昔の思い出がまた不思議さに彩りを添えるのも読みどころの一つ。あちらとこちらの自然な邂逅はいつまでもたゆたっていたいほど好きな世界観。しばしの現実逃避時間に酔いしれた。2022/08/10
pino
96
どうやら赤い箪笥と波長が合ったらしい。睡魔に襲われ読了までに時間がかかった。夢の中で、自分の箪笥の引き出しを開けるはめになった。十姉妹が死んだ時手のひらで暖めた事がある。旅立った魂は再び戻らないと悟った。鳥は独りで逝けるとある。そうだ、後に死んだ母鳥は毅然として逝った。夢うつつで引き出しを開けると小さな鳥の頭蓋骨が出てきた。あるミュージシャンがギターをかき鳴らした時、弦に弾かれたピックが飛んできた。思いだしたとたん部屋はブルーグレー色に変わり雨模様に包まれた。箪笥の中にピックがあった。そして途方に暮れた。2012/09/11
優希
93
面白かったです。譲り受けた古い紅い箪笥の引き出しからあふれる不思議なものたち。箪笥に呼ばれるように訪れるこの世ならぬもの。現実と非現実の狭間をたゆたう繋がりや記憶が愛おしく感じました。過去と今が交錯しつつ、日常と続く世界が心地よかったです。2016/05/07
コットン
72
自分イベント『書評と投票と朗読と』で冬桐さんのおすすめ本。 よく一つの箪笥で簡単に不思議なファンタジー連作短編が書けるものだなあ!と感心します。登場人物の不思議な感性の弟と人をくったような指物師の千石屋がいい味出している。2023/10/07
はる
64
長野さんは正直苦手な作家さんでしたが、これは面白かったです。静かで不思議な幻想譚。あの世とこの世、夢と現実の境目がはっきりとしない、朱川湊人さんや梨木香歩さんの作品に似た雰囲気の作品。結末があるようなないような。セリフに「」を使わない、少し古風な文章は薄闇の様な世界観を演出しています。2017/04/30
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