竹書房文庫<br> 寄港地のない船

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竹書房文庫
寄港地のない船

  • ISBN:9784801903555

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内容説明

その船はどこから来て、どこへ向かうのか。もはや知る者は誰もいない。巨大な宇宙船の内部で、いまや人間たちは原始的な生活を営んでいた。かつて船を支配していたという巨人族、猛烈な勢いで繁茂する植物、奇怪な生物たち、そして〈前部人〉と呼ばれる未知の部族を恐れながら……。世界が宇宙船であることも、わずかに伝承に残っているのみだった。 ある時、狩人のロイは司祭マラッパーから、この船を支配するために世界の〈前部〉へ向かおうと誘われる。だが、仲間たちと〈死道〉へ旅立ったロイを待っていたのは思いもよらない出来事の連続だった。そして、彼が旅路の果てに見たものは――。 幻の傑作SF、待望の邦訳。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

331
本書はブライアン・オールディスの処女長編だが、読後はSFを読んだ感慨に存分に浸ることができる。後になるほど面白さは加速するが、それは次第に世界の秘密と実態が明らかになるからに他ならない。テーマは重層的だが、私はニーチェ以降の神なき世界の神学の可能性に想いを馳せる。人間存在の意味を根底から問いかける―まさしくそのことによって、本書にSFとしての存在意義があると思うのだ。地球に日が昇るシーンの哀しいまでの美しさとともに、物語集結部の悲哀感と絶望感は、逆説的にSFの持つ壮大な可能性に喝采を送りたくなるのである。2016/12/20

まふ

114
どこを目指しているのか分からない巨大な宇宙船での物語。ロイ・コンプレインは弱小民族のメンバー。宇宙船には①巨人族②めまい族③ミュータント④よそ者などの様々な人種がそれぞれの居住区に住んでいるがネズミの集団が生活を脅かしている。彼らはある時前部のコントロールを奪うべく向かう。地球を離れて23世代も宇宙を漂流している彼らは地球に戻りたい一心。だが戻れない理由があった・・・。と、最終章で全貌が明らかになる。宇宙モノとは言えど地球が出てくると安心するのはこの世界に慣れていないせいだろうか。G1000。2023/08/20

藤月はな(灯れ松明の火)

109
寄る辺のない宇宙を永遠に彷徨う宇宙船。普通ならば、その中にいる人々は『2001年宇宙の旅』のように高度な科学技術と社会性を持って生活していると思い込むだろう。ところがオールディスの場合、そこは植物に覆い尽くされ、人々は原始時代へと化している。しかし、司祭のマラッパーは役立たずだな・・・。一方、農夫であることを運命づけられていたファーモアが旅に託した希望が胸に痛い。宇宙船内部は『エイリアン・コヴェナント』での半ば、自然と同化しつつあった宇宙船と『天空の城ラピュタ』を想像してしまいました。2018/05/13

おかむー

83
イギリスSF界の巨匠なんだそうですよ、映画『AI』の原作者なんだそうですよ。でも正直読みづらいっす(´・ω・`)。『もうすこしです』。翻訳モノなうえに、巨大な宇宙船のなかで文明の退行したひとびとの独自の「教え」(宗教的な倫理)が登場人物の言動すべてに絡んでくるので、まぁ読みづらいこと読みづらいこと。宇宙船の全体像とそこに隠された真実が見え始める後半までは正直読み進めるのに努力が必要ですよ。1958年の作品だけに真相も斬新とまではいかないけれど、希望なのか破滅なのかどちらにもとれる結末はまとまったほうか。2017/07/29

Willie the Wildcat

82
SFという土壌で試される動植物の生命力。真実に辿り着くまでの集約と離散の過程に見出す欲の交錯。様々な対立・差別をも乗り越える人間の尊厳は、唯一無二。加えて、(コトの良し悪しは別として)好奇心が、常に道を拓く原動力となる。対照的に、”犠牲”を前提にした政治観が随所に垣間見ることができるのは、その尊厳の裏返しという感。唯一肩透かしのような印象が、”不戦勝”に終わったような鼠との最終決戦。原題『Non-Stop』が地球周回軌道に繋がり、”まわし車”を連想させる。どうにもシニカルだなぁ。2020/07/06

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