内容説明
キリスト教伝道のため来日し、近江兄弟社を設立したW・メレル・ヴォーリズは、関西学院、軽井沢ユニオン教会などを手掛けた建築家としても知られる。留学から帰国した満喜子はメレルと出会い、周囲の猛反対を押し切って、結婚する。近江八幡に居を構え、幼児教育に邁進する彼女と日本に帰化した夫の前に、様々な困難が待ち受けていた――。二人の愛に満ちた生涯を描く感動の長編。※新潮文庫に掲載の写真は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
157
近江兄弟社というのは、メンタームでしかあまり知りませんでした。もともとは、ヴォーリズという人物が設立したようで建築家としてもかなりの功績を残したようです。ニッカの創立者と似たような境遇ですね(夫婦が日本人と外国人で逆ですが)。上巻に続く感じでしたのでもう少し外国の生活を書いていただき3巻くらいにしてもいいのではないかと思われました。ただあまり知らない人物をいつもこのような物語に仕立て上げてくれる作者の感謝です。2017/01/03
かっぱ
52
「負けんとき」と「御免被り候」。どちらも満喜子の言葉で、読後に残る言葉。メレルは米来留になり日本に帰化。関東大震災と第二次世界大戦という大きな波を乗り越えた近江兄弟社も時代の流れで当初の大らかな社風を保てなくなる。34歳で結婚して子供を持たなかった満喜子であるが、学校経営を通して多くの子供たちを育て世に送り出した。解説は満喜子の母校、そしてヴォーリズ建築である神戸女学院大学の名誉教授・内田樹氏。ヴォーリズ建築を訪れる時、夫妻の大きな愛を感じることだろう。2016/08/29
真理そら
45
『屋根をつくる人(門井慶喜)』の予習として読んでみた。ヴォーリス満喜子になるまでの華族令嬢、大名の姫君という立場に縛られて、何かしたいけれど何をしたいのか、どうすればいいのかを悩む満喜子の姿が丁寧に描かれている。上巻の途中までは妻妾同居に悩む女等じめじめした話題が多かったが、そういう描写も満喜子の性格を形成する要素として重要だったのかもしれない。斯波与七郎という人は実在している。が、養子・佑之進はどうだろうか。この作品に登場する広岡浅子も魅力的だ。2019/05/12
すのーまん
25
支えあう人が隣にいると、こんなにも強くなれるのか。上巻ではまだ迷走中だった満喜子が、メレルとともに歩み出し、どんどん強くたくましくなってゆく。佑之進との別れ、華族からの離脱、国際結婚、八幡での暮らし、戦中の酷い扱い…その都度嵐のような困難が巻き起こるのに、力強く立ち向かう満喜子とメレルの姿に涙が出ました。近代国家として未熟だった日本の悪い面を山ほど見た気がします。ふたりの功績の偉大さに、今さらながら驚かされ、頭がさがる思いです。ドラマよりもずっと劇的でした。2016/03/22
Nobuko Hashimoto
22
華族令嬢として生まれ、当時の女性としては最高の学を修めた一柳満喜子はアメリカ留学を経て、自らの進む道を見つける。キリスト教の伝道者として、教育者として、夫ウィリアム・メレル・ヴォーリズとともに奮闘する。当時としては非常に先駆的な教育を実践した功績者であるが、あまり知られていないのは残念。研究も少ない。少し詳しく調べてみたい。月イチ書評@関西ウーマンで取り上げました。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=2016612020/01/04