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内容説明
世界遺産登録の舞台裏。
本書は、ユネスコ日本政府代表部全権大使を務めるなど長く世界遺産にかかわってきた著者が、世界遺産登録に至るまでのさまざまなハードルや駆け引き、そこから生じる問題点を明らかにする。鎌倉は優れた遺産を持ちながらなぜ不登録になったのか。法隆寺登録の際に、石造りの文化財を価値基準とする西洋的文化観に固まったイコモスの専門家たちと繰り広げた大論争、一時は危なかった和食の無形文化遺産登録を成功させた作戦とは……など、世界遺産外交の最前線に立ってきた著者ならではの興味深いエピソードがつづられる。
登録されると多くの観光客が訪れ、その莫大な経済効果から世界遺産は今や世界規模の巨大なビジネスになっている。そのため、人類共通の貴重な自然や文化遺産を守るという本来の理念とは別な次元の問題が生じている。限られた枠の中での登録の駆け引き、そのためのユネスコ内部でのロビー活動、諮問機関のイコモスの評価を無視した形の逆転登録などが日常化しているのだ。さらに、アラブ諸国とイスラエルの対立や、『明治日本の産業革命遺産』登録に際して大きな問題となった韓国の反対行動にも言及し、世界遺産に介入する政治問題に警鐘を鳴らす。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
リキヨシオ
25
「人類共通の遺産の保護・保全」が理念で生まれた世界遺産には遺跡、建造物、文化的景観をさす「文化遺産」と地形、地質、生態系をさす「自然資産」があり、登録数は1000を超える。そんな世界遺産に登録されると莫大な経済効果が見込める為に申請する側の過熱化が進み登録待ちの遺産が増えている。世界遺産は「世界遺産条約」に批准した国しか対象にならない。他の先進国に比べて日本の世界遺産の数が少ないのは条約に批准したのが20年遅かった為。保護目的が巨大ビジネスや政治に利用される…保護か開発か世界遺産のこの先はどうなるのか?2016/07/20
Keizy-soze
7
今やかつてない注目を浴びている世界遺産が秘める意義とビジネスについて元ユネスコ日本代表全権大使の著者が判りやすく解説してくれる。 特に一般人にはわかりにくい、世界遺産に推薦され、ユネスコへ提出するまでのプロセスが非常に具体的に書かれてあって大変勉強になった。 世界遺産検定を受ける人には 「世界遺産の基礎知識」対策には最高の教材です。 是非。2015/08/24
dzuka
2
ユネスコが行っている世界遺産制度について感じる違和感の正体を明らかにしてくれる作品。 著者自身は、ユネスコの日本政府の大使であった人で、世界遺産制度について必ずしも否定的な見方をしている人ではないが、世界遺産の登録の過程を語ってくれていることで、登録されているものの変遷や決定前のロビー活動が登録決定に及ぼす影響がよくわかる。世界遺産と一言でいっても、玉石混交になってきている理由がはっきり分かった。 また、よく混同してしまう世界遺産、無形文化遺産、世界記憶遺産の違いについても、詳細に解説してくれている。 2025/04/19
ふくまるちゃん
2
世界遺産検定の勉強を始めた為、関連するものが読みたいと思い手に取ってみました。 そんな事もあるだろうな、とも思いつつ大変ショッキングだったのが「ロビイングが恒常的に行われている」事。 普遍的価値を保護するためのものが、ビジネスと政治に影響されている、と思うとなんとなく切ない気持ちになります。 しかも、もちろん公表出来る範囲で書いてある…と思うと、実際は私達が考えているよりもっと、色々な問題を抱えているだろうな、と思わずにはいられません。 久々に考えさせられる本でした。2021/05/23
ブルーローズ
2
16年5月9日読了。世界遺産、てどんな風に選定されるのか、実は知らなかったことをこの本で理解しました。タイトルはちょっとドキっとしますが、「おらが村」意識と世界基準のかい離を目の当たりにしました。これからもグローバル化が進む社会で、自分たちがどうすべきか、を提示しているように思います。2016/06/11
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