内容説明
現場取材を重ねた二人が明らかにする
「イスラミックステート」の“肉声”
アジトの地下室の証言、イラクの難民の肉声、シリアに渡ったフランスの少年の言葉……。長期にわたって「イスラミックステート」に迫ったNHKの二人の著者が、中東・アフリカ・ヨーロッパの各地で取材した風景と、この出来事の中にいる当事者のリアルをあぶり出す、渾身のルポルタージュ。
※底本と異なり書籍内写真はカラーで収載しています。
[内容]
【中東・アフリカ レポート】
第1章 新たな「国」が現れた
第2章 戦闘員たち
第3章 アメリカの誤算
第4章 拡散するテロ
【ヨーロッパ レポート】
第5章 外国人のジハーディスト
第6章 勧誘ネットワーク
第7章 移民社会とイスラム過激派
あとがきにかえて
本書関連年表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
30
イラク戦争の失敗(61頁~)。2003年開戦で旧フセイン政権崩壊→秩序と国の機能は一気に瓦解。最も深刻な問題はイスラム過激派が入り込んだこと(64頁)。ラッカは、ISが一方的に首都としている町(71頁)。シリア内戦に身を投じていた仏人の若者の1人が激戦地のひとつ、シリア中部の都市ホムスで自爆攻撃、死亡した。30歳のボンといった(114頁)。ジハーディストはFacebookのいいね! と関心を示す友達に接触して、シリアに呼びよせるという(144頁)。2015/12/10
中島直人
11
(図書館)国家的な組織としてのISという存在は見えなくなるかもしれないが、そ根本的な要因がなくならない限り、同様の存在が取って代わるだけなのではないか、そう不気味に感じてしまう。また、民主主義の仕組みを使って、過激思想を広め、人員をリクルートしているイギリスの状況が、印象に残った。2019/02/02
ののまる
11
ますます混迷していく世界。絡まり合ってもつれて固まった糸を解きほぐす手立てもわからない。という気持ち。でも自分にできることは何かを、考えよう。2016/02/03
田中峰和
2
英のサイクスと仏のピコが勝手に国境を決めたサイクス・ピコ協定。中東問題の難しさは過去にさかのぼるときりがないが、やはり植民地を支配し続けた野蛮な先進国の責任は重い。このルポは、ISに参加する若者を移民2世3世と白人の両方に分けて取材している。宗教も人種も同じ仲間が迫害惨殺されるのを阻止するために参加する。母子家庭で教育を受けられなかったものが参加する。若者が参加する背景を取材するより、新兵器の実験の場として、米軍が一般市民を惨殺する実態を報告する方が重要だろう。安倍と籾井が支配するNHKには無理としても。2015/11/15
まんまるまる亭
1
「野盗国家はどのようにして形成されるのだろか?」と思って買ったのだが、積ん読している内にISが崩壊してしまったため、「このまま放っておくと読まなくなってしまう」と思い慌てて読んだ。ISはイスラム教スンニ派住民には熱烈に支持されていたのが印象的だった。子どもがイスラム教過激派組織に加わるためにヨーロッパからシリアへ行ってしまった親の心情は「人を殺して死ねよとて二十四までをそだてしや」という感じだなと思った。2019/07/25