内容説明
考える自由と神への敬虔の両立はありうるか
たとえ信者であっても、生活を営む上では神の存在を前提にしてはなかなか生き難い。では、預言や奇蹟と現実世界の両立は不可能なのか。西洋哲学が未解決だった「神学―政治論」の謎に挑み、神への敬虔と考える自由を共に肯定するもう一つの世界のあり方を模索する。
[内容]
第一章 『神学・政治論』は何をめぐっているのか
第二章 敬虔の文法
第三章 文法とその外部
第四章 『神学・政治論』の孤独
スピノザ小伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rosetta
20
NHK出版と言う版元のせいかこの筆者の持ち味か、エッセイの様な文章で非常に読みやすい。スピノザと言えば『エチカ』の印象だがこの本は『神学・政治論』を取り上げる。無神論者と言われるスピノザだが、敬虔な信仰者からよりもデカルト主義者からより強く批難されていたのは何故か。宗教と哲学は文体が違うから両立できるはず。どちらかがどちらかを支配したりする関係ではない。聖書には真実が書かれている必要はなく信仰者は従いさえすればいい。権力を委託されるのは国でも宗教でもいいしキリスト教である必要も無い。最悪は偏狭であることか2020/10/29
さえきかずひこ
12
『エチカ』ではなく『神学・政治論』の入門書。著者の言葉遣いは易しいが、その説明される対象はすこし難しい。とくに、ある程度のユダヤ・キリスト教についての知識が理解のために必要だろう。スピノザの敬虔という独自の概念は興味深い。彼は正しい信仰というものは行動から読み取れると考えているようだし、宗教は真理を持たないが、共同体をまとめるのに有用だと見なしているようだ。この先進的な知見を生んだ17世紀のオランダにも関心が出てくるが、同時代の社会に理解されなかったのも納得できるよう宗教的背景を含め丁寧に解説されている。2018/12/10
ももみず
9
分かりやすかった。タームの使い方(スピノザのタームというよりむしろ、上野先生自身の用法かな)で少し立ち止まったけど、あとはスラスラ読めてしまった。少し怖い。「預言者は外から徴を得ているかぎり、たとえ無知であっても全面的に信頼してよい。聖書は敬虔の正しい文法を教え、敬虔は共同社会の平和に不可欠である。キリストも平和と敬虔を教えた。ならば聖書を擁護しないどんな理由があろうか。よって、真理を知るものは宗教と信仰を肯定する」(pp98-99)。これが著者の結論で、そこに至るまでの論理が非常に明快だから腑に落ちる。2014/11/20
りっとう ゆき
8
おもしろかったし目から鱗の本だった。スピノザは私の中ではどちらかというと東洋的な世界のとらえ方をしててキリスト教とは相いれないのだと思ってた。また、最近私はどちらかというとキリスト教に否定的な本を読んでたのもあって、どうなんだろうという思いはあった。だけどスピノザはキリスト教を否定せず、むしろ冷静に聡明に肯定的にとらえていて感動すら覚えた。つまり聖書に真理があるとかないとかじゃなく、契約なのだと。隣人愛、それは自分を抑えて他人に尽くすとかじゃなく、自分の権利と同様に他人の権利も守るというある意味法であり、2022/04/19
hakootoko
8
当時は、権利があるかが問題だった。ベンサムが法を擬制的存在を含む命題から現実的存在のみの命題に書き換えねばならないと考えたように、スピノザは、権利があるということではなく、権利が行使できること、すなわち何かもっと物理的な力を問題とした。『神学・政治論』は、聖書を真理の、ではなく、社会契約説と並ぶ正当(統)性の書物として読み、真理のための更地を用意した。聖書は真理を含まないが、正しい。つまり敬虔であることすなわち神と隣人を愛せということが書いてある。彼は更地に力の理論を据えた。『エチカ』と『国家論』である。2021/10/24
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