内容説明
イデオロギー的偏向やうすっぺらな善悪を超え、戦場の奇妙な人間模様を描くことで、不気味なユーモア、シュールな世界として、〈戦争〉を読者に刻みこむ。兵士たちに蔓延する「迷子病」が県城自体の引っ越しを誘発する「城壁」ほか、寓話的ともいえる作品のなかにも暗号兵としての体験が息づく。戦争文学のもつ既成像を粉砕し、小島信夫の世界観の核を示す九作品。
目次
燕京大学部隊〈全〉
小銃
大地
星
城砦の人
離れられぬ一隊
無限後退
城壁
小さな歴史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
勝浩1958
9
どの話もヘンなのです。読んでいてとても居心地が悪いのです。それはおのれの思考の常識からの逸脱を忌避するからであろうか。でも作品はそんなことはお構いなしに、どんどん荒唐無稽の様相を呈してきます。そして作品の不可思議な魅力に私の常識も搦め取られてしまい、読み終えるころには脳に若干のむず痒さを残しながらも小島作品の中毒患者になるのであります。2016/04/02
halow
1
小島信夫作品だが、初期作なので筋があるし、読みやすい。戦争という特殊状況の中でも個人的な問題ばかりを考えている登場人物たちの姿に「実際そんなものだろうな」と納得するものを感じた。2025/01/28
ハチアカデミー
1
表題作の「城壁」が凄い。城壁を守るために配置された兵士たちが、その守るべき城壁を見失う短編作品。城壁を見失った兵士の「何のために、ここにいるのですか」という問いに対し、「『城壁』守るためだ」「だからこそ探すのだ」という答えの無意味さが際立つ。不条理戦争文学と言いたくなるが、むしろ戦争が不条理なのだということが、他の作品からも伝わる。銃にかつて体を重ねた女を投影する兵士を描く「小銃」、階級ごとに付与される星への執着する軍人たちの悲哀を描く「星」など、不気味で、人間の思考の複雑さ奇怪さが表現される作品を所収。2015/10/15
ひろゆき
1
「戦争小説集」のタイトルに、悲しいかな軍事マニア心が惹かれてしまい、表題作の『城壁』から読み始めたが、……状態。以下、他の作品も……状態、なのは基本変わらず。第二次世界大戦の中国戦線を舞台に、兵士の異常な心理を描くのに、あまりにシュールで、ついていくのが、なかなか、とてもとても。熟読分析するだけの根気が欠けていまして。『小銃』がやや心に残る。2015/09/14
夕木
1
小島信夫が『アメリカン・スクール』で受賞した前年は吉行淳之介、翌年は遠藤周作が受賞してますが、今回の『城壁・星』という戦争文学のみで小島を解読したら、彼は「第三の新人」の中で異彩を放っていると思いました。一例として『小銃』。本作品は「銃」を「年上の女」に見立てて、その小銃で中国人の女を処刑してから主人公が崩れていく過程が描かれています。「野獣」に囲まれて国と戦う場に、男が女に頼っていた、つまりは「自分(男)の役割欠如」という戦後に小島が主として挙げる崩壊が示されていて、第三の新人+戦争の凄みを見ました。2015/07/13




