内容説明
NYの日本料理店で成功をおさめた芦田夫妻は、三十年ぶりに帰国。老後をふるさと若狭で暮らしたいと考えたからだった。だが、美しかった里は、原発銀座へと変容し、過疎化の問題を抱えていた。大自然につつまれて安らかに逝きたいと願う夫婦が、ふるさととの再会で見たものは――。急激に変貌する日本に戸惑いながらも、安息の地を探し求める一族の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
46
昭和の終わりに著しながら、10年経って出版された自伝的小説。故郷の若狭を見つめる水上さんの視線は厳しく、切ない。「原発は大勢の都会人を村へ連れてきて、町の経済発展に力をくれたが、大事にしてきた村人のおおらかさを根こそぎ変えてしまいよった」年老いた夫婦は原発密集地となった故郷に戻るか悩む。「いい村だけど、原発さえなければ」という夫に反論出来ない妻。周囲は「そんな事故なんか起きない」という楽観論や「起きてしまえば、どこにいたって同じ」という諦観ばかり。東日本大震災後の日本人の心情を描いているかのようです。2017/04/20
Cinejazz
7
夕方の車窓から眺める地方の村々や田園風景は、瞬く間に後方へ過ぎ去っていく。時おり年配らしき人の姿が目に飛び込んでくる。ここにも悲喜こもごもの人生の物語が散りばめられている・・・。そんな思いをひき寄せる【水上勉】の長編小説である。著者の故郷である福井県を舞台に、遠く離れていた故郷に集う家族の心境が綿綿と語られていく。“原発銀座”と揶揄されて久しい福井県沿岸に生活基盤を築いてきた人々、帰郷して故郷の風景を眺める人々の心情を淡々と描きつつ、生きとし生けるものへの慈しみを謳いあげた、心の奥深く沁みわたる一篇。2019/11/13
桜もち 太郎
5
作者のふるさとである福井県に対する思いが伝わってきた。原発銀座がある若狭、福島原発事故の前に書かれたものだが、構造は全く変わっていないのかな。2014/02/22
rinrinkimkim
3
酒井18。水上氏の風景描写が大好きです。櫻守も馬の話も美しい景色が目の前に4Kで映されるよう。本書も若狭の海が(裸でキャシーが走るシーン等)見えましたよ。そのキャシーさんのお母さん探しの物語かとおもいきや、お母さんの地元物語でした。水脈のように底に流れる哀愁や裏悲しさは水上さんならでは。どこで骨になるか・・・中々結論出すのを先送りにしがちな問題です。2022/04/17
ひろし
2
若狭、丹後地方に故郷を持ち、都会で暮らす人には堪らない内容です。この本に出会い、水上勉ゆかりの「若州一滴文庫」にも行ってきました。こちらもおすすめです。山々に囲まれた静けさに心が洗われます。2017/05/07