内容説明
その女には、タヒチに到着した晩、ホテルのバーで出会った。「地球って、意外にさびしい星なのね……」と、なげやりに口にした彼女は、4年前のある日、パリの雑踏の中でひとり息子が行方不明になったという過去を語りはじめた。それ以来、子どもを探して旅を続けているのか、子どもを失った悲しみをまぎらわすために旅をしているのか、わからないのだと言う――。気品と威厳に満ちたちょっと風変わりな女との出会いから、学生生活の終わり近くに知り合った年上の女のことを思い出させられ、思いもよらぬ過去と現在とのつながりが、鮮やかにうきぼりになる表題作の他、女にまつわる短編全5編を収録。小松左京ライブラリによる解説つき。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hirayama46
4
「女シリーズ」から3作品と、単発の短編2編を収録。女シリーズはいずれも幻想的な雰囲気の物語になっていて、小松左京はどちらかといえばストーリーテリングはじっくりとしたものがある印象なのですが、本作もめくるめくストーリーというわけではなく、落ち着いた雰囲気の小説になっていました。叙景的なディティールの書き込み量の密度がよろしかったです。「黄色い泉」は昔のPCゲームのホラー伝奇もののような感覚があり、どこか懐かしい味わいが好みでした。2024/10/16
八八
3
小松左京は日本を代表するSF作家のひとりであるが、本著はSF作家のイメージから離れた「女性」をテーマにした短編集である。作品は5本が収められているが、個人的には「握りめし」が印象に残った。小松は、異世界や異星人の様な存在として女性を捉え、幻想的で素晴らしい部分と少し不気味な部分を持ち合わせた存在として描いていると感じた。私自身も異性に対して小松のような感覚を持ち合わせている所があるために、収められた短編のひとつひとつを沁々と拝読することができた。2023/01/03
ふがし
2
時代を感じた。この世代の作家はやはり戦争がひとつのきっかけになっているのかもしれない2010/05/08
洪七公
1
読了1984/02/03