内容説明
殺生関白秀次、太閤様以上と囁かれた北ノ政所、桂離宮を造営した八条宮、大坂城とともに滅んだ淀殿母子など、ひとひらの幻影のような豊臣家の栄華のあとを、研ぎ澄まされた史眼と躍動する筆で現代によみがえらせ、司馬文学の魅力を満喫させる連作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
137
一庶民から天下を取った秀吉に関わった人々の数奇な生涯を描く。北ノ政所と旧臣加藤清正・福島正則勢、故浅井長政勢である淀殿及び石田三成等の近江閥との軋轢が興味深い。同著作「関ヶ原」では判りにくかった、敵味方に分かれる経緯が詳しく書かれている。淀殿とその乳母がちょっと饂飩すぎる描き方に見えるが大河ドラマ「真田丸」を顧みるにあながち間違いでもないのかも。秀吉の愛情は一方的にも感じ取れ、それ故に憎悪を呼んだのではないかと思う。愛情は、受けるだけではその人を成長させず、他人に分け与えてこそ初めて成長できるのである。2018/07/04
Die-Go
68
「国盗り物語」「新史太閤記」「関ヶ原」「城塞」では描ききれなかった豊臣秀吉の縁故の人々の短編集。「豊臣秀次」「小早川秀秋」「宇喜多秀家」「北の政所」「豊臣秀長」「駿河御前」「結城秀康」「八条宮」「淀殿、秀頼」と九編が編まれているが、中には血の繋がりのない者も含まれており、その生涯は豊臣家の一員として権謀術数の中で振り回されまくっていると言う点で共通する。繰り返しになるが長編では拾いきれなかった所が描かれていることで、これまでの物語に深みを与えてくれている。これにて暫く戦国時代からは離れようと思う★★★★☆2016/09/02
chantal(シャンタール)
67
【司馬遼太郎の二月】すでに様々に語られている秀吉だが、この本は秀吉の家族を取り上げ、その家族を通して秀吉を語っている。晩年まで子に恵まれなかったため、あちこちから養子を取っていた秀吉。お恥ずかしながら、小早川秀秋が彼の養子でさらに小早川家へ養子に入ったとは知らなかった。司馬先生の筆は、まるで教科書を読むような淡々とした語り口で、またちょっと歴史を勉強したくなった。度々登場する、黒田如水についてはあまりよく知らないのだが、ちょうど「吉川英治全集」の中に彼の物語があるから続けて読んでみよう。2018/02/03
たいぱぱ
66
秀吉本人を脇役に配置し、秀吉を身内に持った9人を語る事で豊臣家の栄華衰退を描き出した短編集。秀吉は貧農から身を起こしたからこそ到達できた栄華があり、それ故の衰退があった。結局処刑される関白秀次、豊臣家を滅亡させる大いな要因となった小早川秀秋などは、秀吉の「一族」への甘さが産んだ悲劇としか言いようがない。これは現代の独裁国家への警告だよな。秀吉の正室・寧々、実弟の秀長がいなかったら豊臣家はなかったと断言できる程ふたりは突出した人物でした。家康の次男である結城秀康と共に豊臣秀長の事をもっと知りたい!2024/06/14
けやき
53
【再読】歴史上の一時期、急に浮上し滅亡した豊臣家の人々を描いた短編集。再来年の大河の主人公である秀長が主題の「大和大納言」など、面白く読んだ。2024/04/23