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内容説明
「遺族の極限の悲しみ、想像を絶する修羅場」を描きつくしたと、朝日新聞等で絶賛されたベストセラー、待望の文庫化。確認までの127日間が鮮烈に描きだされる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
67
日航機墜落事故で遺体の身元確認に従事した著者のルポタージュ。事故は子供の時分なので朧気にしか覚えていないが、知っている人の家族が巻き込まれたというので何とも言えぬ気持ちで印象に残っている。一読印象に残るのは航空機事故というものでの遺体の状態、そして身元を明らかにするための関係者の奮闘。人体が別の人体にめり込んでいる等、想像を絶しているなあ。著者の記述が淡々としているだけに、凄惨さが増しているというか。そして不眠不休で取り組む関係者。風化させてはいけない事故だけに、こういうルポは本当に貴重でありがたい。2021/04/16
のっぱらー
55
事故当時は小学生でしたが、今でもあの事故の報道は覚えています。写真週刊誌に載っていた現場の凄惨な写真も目に焼き付いています。本書は当時遺体確認の最前線を指揮し、127日間に全力を尽くした著者にしか書くことのできない、当時の遺体確認所の真実を綴った作品。あの日を忘れないためにも、航空機関連の仕事に就く方には必読の書ですね。2016/08/19
thee birdmen
37
著者は日航ジャンボ機墜落事故で、死体と遺族に向き合った警察の責任者です。あの事件に関しては様々な書籍が刊行されているけれど、こういう目線で語られている本は読んだことがありませんでした。生々しい描写と言葉のやりとりには、現場にいた人しかわからない異様な熱がこもっています。あの日から今年で34年が過ぎ、この事件を経験した社員はもう全日空全社員のわずか5%しかいないという現実に、風化させてはいけないという思いを強くします。2019/08/16
姉勤
33
犠牲者520人に上った約40年前の日航機墜落事故。奇跡の生存者救出や墜落までの家族へのメッセージのエピソードがよく人口に膾炙されるが、本作は当時、犠牲者の身元判明に現場指揮をとった警察官によるドキュメント的内容。八月の酷暑の中、警察官、医療関係者、ボランティアの方々による、締め切った体育館で昼夜を徹しての身元確認。凄惨な描写に、参ってしまう読者もいるでしょう。読後においては自らの責務と任務を全うする人間の尊さと、現代、彼らを基準としてはならない不用意さと無知さ、純真の善意を戒めとしなくてはならないと思う。2022/01/05
あやの
33
日航機墜落事故時、遺体の身元確認の検死所で指揮を執ったのが作者。刑事官という職業柄、文章は記録的な書き方だが、当時の混乱ぶりや言葉に尽くせない凄惨さが伝わる。そんな中で不眠不休の作業に当たり、警察官や医師達ですら、疲労によって精神的にも正常でなくなってしまう様子まで書かれていた。そして、それぞれの遺族の様子から垣間見える家族愛や、宗教観にも言及され、極限の現場を経験した者でないとわからないことを数多く教えてくれる作品だった。どんなに時間が経っても忘れてはいけない事故である。2018/10/13