- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
日本人の中には「海」がある。なぜ田植えのときにイワシを食べるのか。山村でも神事の供え物には海の魚を使うのか。日本文化の基層としての海洋性。村落共同体ともノマドとも異なる漁民たちの「ゆるやかな定住」。知られざる海の生活から見えてくる「もう一つの日本」。柳田国男以来の硬直した日本観の見直しを迫る画期的論考。(講談社選書メチエ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gecko
8
日本文化の核心には海があるという「海洋性」の考えかたを提示し、日本を里・山・海・町などに分類する従来の民俗学的世界の図式に対して、日本文化全体を包括するものとして位置づける。私たちの生活・文化が海につながっていることを実感させられるのは、食事以外の場面で塩が使われるとき(葬式の参列から帰ってきたとき、相撲の土俵入り、盛り塩=「海に浄められる」)やおめでたいことを海の魚で祝うときなどである。漁村社会には外来者を取り込む柔軟性があるとし、移住漁民の生活スタイルを「移動をはらんだ定住」「ゆるやかな定住」とする。2022/06/29
氷柱
3
1048作目。2月3日のみ。海に囲われているということで日本は独自の海洋性を身に付けた。そして山のように海から離れている土地にも海に対する信仰がある。地域による独自性もある。様々な面から海と人との付き合いを取り上げてくれている。さらに海での生活についても言及が及ぶ。体当たりで調べ上げた彼らの生き様は生々しいが紙面の都合で取り上げられていない部分も多くあるのだろう。いずれにしてもバラエティに富んだ一作である2024/02/03
ivnin
0
「日本」全体の文化には海洋性がある。それは内陸の里・山・町に海産物が流通するようになって発達した民俗文化である。また漁民は漂白の民ではなく、「ゆるやかな定住民」である。それは移動を内に含む定住であり、ひとつの定住の形である。第一章~第三章が面白かった。桜田君と漁の活気にロマンを感ずる。2010/09/04
紙魚
0
漁民の移動であって、労働者の移動ではないのがみそかな。漁法や文化も一緒に移動していく。それにしても昔から人や物の移動が相当活発だったことに驚かされる。2009/10/25