内容説明
「この作品が自分は一番嫌いだ」(奥泉光選「道化の華」)、「不思議な明るさに包まれた怯えの百面相」(堀江敏幸選「富嶽百景」)、「『男性というものの秘密』を知っている作家」(松浦寿輝選「彼は昔の彼ならず」)――七人の男性作家がそれぞれの視点で選ぶ、他に類を見ない太宰短篇選集。
目次
道化の華 奥泉 光・選
畜犬談 佐伯一麦・選
散華 高橋源一郎・選
渡り鳥 中村文則・選
富嶽百景 堀江敏幸・選
饗応夫人 町田 康・選
彼は昔の彼ならず 松浦寿輝・選
年譜
選者略歴
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めろんラブ
82
太宰は短篇を多く遺したので、このような魅力あるアンソロジーを編むことができたのでしょう。そうそうたる顔ぶれの男性作家が選んだ珠玉の一篇は、200字程の推薦文を携えて、現代においてなお輝くことを証明しています。太宰が太宰であることが好悪の分かれ目なのかもしれませんが、いずれにしても、とても捨て置けない才能に、同業者として反応せざるを得ない様子が選者の推薦文に絶妙に現れており、その矜持にくすりとしたりも。太宰好きの方、或いは読まず嫌いの方におすすめの一冊です。2015/03/18
ましゃ
52
七人の男性作家がそれぞれの視点で選ぶ太宰短編選集。敢えて男性作家が選んだ作品を読んで気付いた事、太宰が『男性というものの秘密』を知っている作家であるという事。男は誰だって見栄を張る、しかしその中には男としての弱さもある…それを気付かされ、また作品ごとに痛感させられました。私は特に『散華』が衝撃だった。若くて詩の才能がある太宰の弟子だった若者が出征し、戦地から届く弟子からの手紙に対する太宰自身の私小説みたいなものなんだけど、師匠として…作家として…太宰はその手紙にどう応じたのか。見事だと思う。読んで下さい。2018/07/16
detu
25
『女性作家が・・』と『男性作家が・・』二冊の太宰アンソロ。知ることなど無かったであろう太宰を知ったと思う。拾い物。図書館本。2015/12/13
ちか
25
素晴らしい!太宰好きにはたまりません。宝物です。2015/05/28
mm
23
太宰の短編の中で何に惹かれるのか?って、かなり個性が現れるんだなぁ、とびっくりです。わざわざ企画するだけの値打ちはあるね。作家さんが短いコメントを書いてくれて、それをまず読み、それを補助線のようにして作品を読むと、一人で読むのとは味わいが違う。プチ読書会⁇奥泉さんのように一番太宰らしいから「この作品が一番嫌い」、というのを出してくる人もいたけど、堀江さんが富嶽百景を「不思議な明るさに包まれた怯えの百面相」と書いているのがドーンときた。このコメント込みで、私はこの作品が大好きになった。散華もいいけど。。2018/02/28