内容説明
「ほとんど奇跡のような成り立ち方をしている」(川上未映子選「古典風」)、「彼自身が、ひとつの作品」(桐野夏生選「思い出」)、「この甘やかさに浸らずにいられない」(松浦理英子選「秋風記」)――七人の女性作家がそれぞれの感性で選ぶ、未だかつてない太宰短篇選集。
目次
女生徒 江國香織・選
恥 角田光代・選
母 川上弘美・選
古典風 川上未映子・選
思い出 桐野夏生・選
秋風記 松浦理英子・選
懶惰の歌留多 山田詠美・選
年譜
選者略歴
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
98
男性作家が選んだ太宰と違うのは、彼女たちが選んだ短編7つが合わさって全体がほのかにピンク色に思えること。私は女性作家の書く話に共感できる場合が少ないのだが、「これは私のはなし」という彼女らの自意識を感じ、その自意識を受け入れられない場合に全く共感できないからだとこの選集を通じて認識した。好きな話を選ぶにも自己の投影を感じるものはやはり苦手。『秋風記』(松浦理恵子選)『思い出』(桐野夏生選) 『母』(川上弘美選)『古典風』(川上未映子選)の順に良かった。特に秋風記の切なさが良かった。不倫は成就はできぬ。2015/03/18
ゆにこ
73
角田さんが解説に書いているように、生きにくかった思春期の事を思い出して、私もひーっと叫びたくなった。「女生徒」が一番好きかな。歌留多の最後にはドキリとした。次は男性作家版。こちらも楽しみ。2016/07/27
Y
37
未読のものに思いがけず面白い作品があった。太宰治はワンフレーズにつきふしぎに光って心に残るものが多い。「恥」はオチも痛烈で面白かった。しんみりと笑いがうまい具合に同居していた。「思い出」は自慰をあんまとしつこく表現する若かりし太宰に笑った。「懶惰の歌留多」はヴィーナスの箇所は深い教訓を与えてくれてふむふむと感じ入った。けれど、書いた本人は軽い気持ちで書いたのかな。少女から遠ざかってしまったけれど、「女生徒」の主人公の人に対する潔癖さ、自分でいることの気まずさと陶酔には今でも狂おしいほど共感を覚える。2016/09/04
detu
30
図書館本。特別、太宰が好きなわけでもないのですが、やはり読みたくなるのです。でも特別好きでもないのでなにを読んでよいのか分からないところでこのアンソロ見つけました。何で太宰を読むとこう、自己嫌悪みたいなかんじになるのかなあ・・・一番分かんなかったのは川上弘美選『母』。良くも悪くも太宰は気になる。次は男性作家が選ぶ です。2015/12/08
MINA
24
≪女生徒≫での終盤「明日もまた、同じ日が来るのだろう/幸福は一夜おくれて来る」らへん何度読んでも刺さる。太宰治を自身のように感じるという意見が多々あるのも頷ける部分確かにある。物語の前に選者からの一言があるお陰で理解の助けになった。≪恥≫リアルで笑える。≪母≫川上弘美の言う通り、最後の一言痺れる。≪古典風≫もラストを何度も読み返してしまった。これもやっぱ最後の一文強烈。≪秋風記≫も同じくラストが皮肉…淡々とどうしようもない事実を突きつけるのが哀しく寂しい。≪懶惰の歌留多≫怠惰な言い訳が微笑ましい。2018/03/10