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内容説明
1922年京都岡崎公会堂で開かれた全国水平社創立大会は、決議第一項で次のように意思表示している。「吾々に対し穢多及び特殊部落民等の言行によって侮辱の意志を表示したる時は徹底的糾弾を為す」。この精神は差別者たちへの抗議・糾弾の中で、全面展開されてきた。糾弾は部落解放運動の生命線である。しかし憎悪をむき出しにした悪質な差別は現在も再生産され続けている。問題は何一つ解決していない。ところが中心になるべき解放同盟中央本部は弱体化している。いったい問題はどこにあるか。反差別運動の再生へ、いま狼煙を上げる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
災害大嫌い美少女・寺
69
部落解放同盟が、マスコミの差別表現を糾弾してきた活動史の本は、反差別系の出版社からは以前から出ていたが、入手しやすい一般的な出版社の新書から出たのはこの本ぐらいではなかろうか。その点で間違いなく意義と価値がある一冊である。近年は同盟が弱くなったそうだが、代わりに毎月何事かで炎上している時代である。文学作品も糾弾されており、私の好きな司馬遼太郎『竜馬がゆく』もされている。司馬さんは指摘された部分を書き直し、長め謝罪の手紙を書いている。その書簡が全文掲載してあるが、反省しているのかイマイチわからん手紙である。2021/02/03
さとむ
9
近年、メディアに対する「糾弾」が減ったのは、これまでの同盟による啓発活動の成果ともいえるが、差別表現を「リスク」として管理するメディアの姿勢によるところが大きいのではないか。一方で、ネットの世界では匿名個人による罵詈雑言が延々と続く・・・。というようなことを考えていたら、今日の朝刊に浦和サポーターの記事が。以下、引用。「差別表現への抗議のなかで、同盟が問うてきたのは、執筆者の差別意識の有無ではなく、この表現のもたらす社会的影響とその責任の所在についてである」。2015/11/28
モリータ
8
◆2015年刊。ちょっと感想が書きにくい。年代順に差別表現が問題となった事案を紹介しているが、書き方が羅列的・未整理な印象を受けるため。事案の存在を知れるのはよいことと思うが、各々の記述が事実を十分説明しているかには不安を覚える。2021/01/31
CTC
5
著者は永らく部落解放同盟中央本部でマスコミ対応を務めた人(今は解同本部委員長と対立中)。「解同はなぜ社会的影響力を失ってしまったのか」という自問に、「“権力”への糾弾を回避しつつ、抗議しやすい対象のみを糾弾する、ダブルスタンダードに堕ちたから(大意)」と述べ、解同がコンプライアンスを重視し、法令遵守を内部規範に位置付けたり、「差別を政治で解決しよう」とする志向性に否定的だ。これはそれだけ時の“権力”が差別をなくすにおいて役に立たず、被差別者自らが心の痛みを叫び続けねばならなかった、という事なのだろう。2015/06/19
オールド・ボリシェビク
4
2015年6月刊行。著者は刊行当時は部落解放同盟に所属していたが、その後、除名された。糾弾は「差別した者と差別された者が手を結び、差別させているものと闘う」思想の獲得を目指しているという。糾弾され、謝罪し、そしてまた差別を再生産してしまうマスコミの体たらくを衝く。さらに、著者は解放同盟の弱体化を厳しく指摘。「国家の強権化は解放同盟の弱体化にある」とした柄谷行人の発言を紹介している。差別を見抜く直感と感情を失った解放同盟中枢への批判は厳しい。しかしその後、情況は著者の懸念した通りに推移しているようだ。2025/05/26