内容説明
爛熟と頽廃の世紀末ウィーン。ある秘密のため引き離されて育てられた、オーストリア貴族の血を引く双子――ゲオルクとユリアン。ゲオルクは名家の跡取りとして陸軍学校へ行くが、決闘騒ぎを起こし放逐されたあげく、新大陸に渡って映画制作に携わる。出生自体を否定された片割れのユリアンは、ボヘミアにある廃城〈芸術家の家〉で、謎めいた少年ツヴェンゲルと共に高度な教育を受けて育つ。双子はそれぞれ全く異なる道を歩むかに見えたが……現代文学の最高峰を極めた名手が魔術的筆致で描く傑作ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
150
なるほど後半ようやく交わってきた♬20世紀初頭を背景に、ハリウッドにウィーンに上海と場所を変えて、それぞれ違う人物目線でじっくり描かれる章構成。癒着双生児として生まれながら切り離されたゲオルグとユリアン、名声を得た存在は一方を“できもの”と蔑み、片や自らが閉鎖空間に燻る非在を憂う…いつもながら重厚で混沌とする雰囲気に惹き込まれるも正直いろいろと紆余曲折する展開は決して優しくはない(笑)それが或る潜在能力へのアプローチから、一度目にした場面が掘り起こされると期待高まるばかり!暗澹とした予感のまま早速下巻へ!2021/05/26
naoっぴ
74
【芸術週間@月イチ】壮麗、退廃、混沌、幻想の皆川的世界観が頭の中で渦を巻いて眩暈しそう。上巻は、シャム双生児だった子どもが切り離されて別々の道を歩む運命譚のまだ入り口でしかない。物語の歴史的背景と、双子それぞれの重要なのかわからないような話が長々と続き、登場人物の多い群像劇のようでもあり、読みづらかった。物語の方向が見えてきたのはラスト近くなってから。私の頭の中でとっ散らかってるミステリアスなエピソードの数々、さあこれからどう繋がるのか、ちゃんと整理整頓しないと気がすまない(>_<)!すぐに下巻へ。2017/03/24
勇波
69
『開かせて…』みたいな派手さはないけど、読み手の内臓を摑みながら進んで行く物語の重厚感は相変わらず圧倒的です。この雰囲気に浸りながらの読書は至福のひと時なのです。双子の兄弟にパウルら第三者がどう関わってくるのか下巻も楽しみ★2016/08/21
Rin
67
ページを何枚か捲ると、ずっとゲオルクの語りが続く。なんだかよく分からないまま、少しの読み難さを感じながらの読書。それでもユリアンの場面に切り替わってからは、少しずつペースも上がっていった。ふたりの世界に、ふたりの意識。彼らは繋がっているのか?本当に彼らはそこにいるのだろうか?いつものように、どんどん読んでいる私が混乱してくる。これから彼らの世界と、彼ら自身は出会うことはあるのか?特にユリアンの精神が心配になる最後だった。私にとっては世界に浸りにくい物語だったけど、不思議な魔力を感じながら下巻にいきます。2018/07/01
絹恵
49
他者が介入することで、言葉が生まれ、影を知って、すれ違う意識に運命の循環を感じました。結び目を隠して分からなくしてあって、それを探ることは憚られるような波にのまれていきました。解いているのか、結んでいるのかさえ、曖昧になる流れに身を任せることで、邂逅を待ちたいです。2016/11/02
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