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内容説明
必ず勝つという3枚のカード。伯爵夫人がかのサン=ジェルマン伯爵から授かったというカードの秘密をゲルマンは手に入れるが……。現実と幻想が錯綜するプーシキンの代表作『スペードのクイーン』、皮肉な運命に翻弄される人間たちを描く5作の短篇からなる『ベールキン物語』。あのドストエフスキーも激賞したロシア近代文学の父プーシキンの傑作を、原文の特徴を見事に再現した新訳で。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
90
再読。今更ながら知ったのですが、プーシキンの人生って結構、波乱万丈ですね・・・。『スペードのクイーン』は概要は覚えていたけど、真逆、サン・ジェルマン伯爵絡みだったなんて。しかも伯爵夫人の老いたが為の身勝手さや傍迷惑な気紛れさは中々、リアルです。でもゲルマンは自業自得だけど、心痛ばかり、背負ってきたリーザちゃんが幸せになれて良かった。運命の悪戯を描いた『べルーキン物語』は「吹雪」や「葬儀屋」では主人公たちにヤキモキしつつもラストでほっこり。「駅長」は心が温かくなります。2017/08/30
マエダ
61
散文小説の代表作「スペードのクイーン」と「ベールキン物語」。「スペードのクイーン」賭博のカードの数値にまで意味があるという考察が面白い。2018/09/12
ころこ
47
中編と短編集の異なる作品同士だが、賭け、決闘をはじめ、自然という共通点が見受けられる。自然を運命と解釈すると完全に網羅することになる。どれも人間には操作不可能な所与の条件であり、人間が選択しようとするとかえって流れを絶たれ命を失うことになる。この必然性を一神教的な神と表象するのか、自然と表象するのか、後者に軸足があるのがロシアっぽくて、日本人にも受け入れやすい理由ではないだろうか。2025/06/14
シッダ@涅槃
30
【改稿】各編、各章にエピグラフを付けるとかなかなか小粋である。ロシア文学というとほとんどドストさんしか読んだことがないのだが、ヨーロッパ先進国に対する屈折なんかありながらも、国民性は陽気で人懐っこく情熱的、でいいのかな、と思ってしまう。プーシキンもこんな洒脱な短編書くのだから、決闘で命を落とすような男に見えない。2017/02/06
ぺったらぺたら子
28
ドスト『貧しき人々』の中でワーレンカが貸したのが本書。最後にこの本を形見に欲しいと言う所が泣けるんだ。恋というのは文化の密接な伝達・交換でもあるのだから。さてプーシキンの気持ちよさ。かっちりと清潔に構成され、理知的でありながら冷たくはなく、何か暖色というのか、肯定的な朗らかさがある。人間の情動が捻じくれたり縮こまったりしていない。敢えて言えば男らしさ。そこに、もう現代の我々にはどうしたって味わえないような幸福感があるのだが、どうやらそれもそうしたものの抑圧される時代に抗って、敢えて高く謳ったものらしい。2021/04/30