内容説明
子供時代を過ごした家の庭に生えているクヌギの木。土地を更地にし、念願のマイホームを建てることにした僕に、クヌギの木が語りかけた。「兄さん、僕だよ、アキオだよ」。木が、恐るべき取引を持ちかける――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
25
横浜郊外の古い実家の庭にある1本のクヌギの木。息子にクワガタを捕まえさせてやろうと木の幹に三つの傷をつけたことで始まる不思議な事象。記憶にもなかった弟がクヌギの木に宿る、そして話しかけてくる。。ホラーというよりは悲しい家族の話といった感がある。遺された妻子がちょっと気の毒で、あまり読後はよくない。2012/06/02
たぬ
23
☆4 日本ホラー小説大賞受賞の前作『化身』には3点しか付けられなかったのでそれより高ければいいなと思いながら読んだ宮ノ川氏2冊目。結論から言うとかなり面白かったです。良く練られた構成だったし主人公のためらいや困惑もリアリティがあったと思う。被害者かと思いきや実は加害者だったというのはまあ想定内だったけどラストは予想もつかなかったなあ。弟の行動は悪意がまったくないだけに怖かった。2020/11/23
佳容
17
「何に恐怖を感じるか?」は人それぞれだと思うが、私はとにかく得体の知れないものが蠢いている感じは苦手。この作者は、身の内に何かがうごめいている描写が本当に見事だと思う。嫌悪感に近いその感覚を、私は好むわけではないのだが。人は一度怖れにとり付かれると、空気の流れやかすかな音を全部拾って、自己の恐怖を増幅させるという。そのホラースイッチのようなものがどこで発動されたのか、ただそれを探ってみたくなる。2010/10/15
鈴
16
わたしは悲しさよりも怖さを感じたので、カテゴリーはホラーで。幼くして亡くなった弟の魂が宿る木。そして奥さんが妊娠→出産で、だいたいの予測はついたが、ラストは救われない。2013/07/12
nyanco
13
受賞後初の書き下ろしの長編…とくれば期待は高まるが「化身」で感じたような凄味が感じられず、序盤から中盤までは展開が緩やかでややもっさり感も…。弟との会話の中で過去が思いだされる。癇癪持ちの父、父から受けた多くの仕打ち、何故、私はあんなにも父に疎まれていたのか…。そして弟の死因は…新居での幸せな暮らし、だが長男が次男へした行動を見て、彼は思い出してしまった…。この辺りから一挙に物語が進みます。続→(ネタバレあり)2010/08/23