内容説明
音声録音だけが手がかりの失踪人探し、深夜に囁かれる幽霊の声の調査……。零細企業の武佐音響研究所には、今日もワケアリの難事件が舞い込む。天使の声帯を持つ所長・佐敷裕一郎、口を開けば罵詈雑言の音響技術者・武藤富士伸、そして2人にこき使われる雑用係・鏑島カリン。彼らの掟破りなサウンド・プロファイリングが、“音”に潜む人々の切ない想いを解き明かす。さらに、彼らと因縁浅からぬトラブルメーカーのミュージシャン・日々木塚響が生み出した不思議な音色の謎は、皆を壮大な生命の秘密へと導いていく──個性的な解析チームが東奔西走するSF音響事件簿!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
84
いくら題名とはいえ、このフレーズは文法的に間違いなのでは、と心の狭い事を考えていたら、音響に纏わるミステリーという体なのね。それにしても、聞いているうちにどんどん喉が渇いて、水へ引きずり込まれるとか、聞き続けると耳の器官が侵されるって、どんな「魔曲」!?と戦々恐々としていたら、どんどん話が広がって生命の誕生までいってしまった。これが案外心地好い。うわあ、荒唐無稽、と思いながらも、宇宙の果てに想像を巡らすのは楽しいね。2015/09/15
miroku
21
音・音楽をテーマに、こちらの想像を超えた物語を作り出す、著者の力量に感服。2016/12/17
長野秀一郎
14
「音」を題材にしたSF連作集。全4作を収める。録音データのみでの捜索、録音されない声、溺死を強いる音楽、聴覚そのものを奪う音楽、がそれぞれの題材だ。主人公たちはその謎を解明することになる。1話2話は身近な事件を扱い、門外漢的には現実にもありえなくもないかもと思える奇跡が依頼者を救う話で、なるほどこういう趣向かと思ったら3話で転調、4話で一気にスケールが大きくなって驚いた。ただ人物造形がラノベ寄りになっていてリーダビリティを高めてはいるが、世界観には合っていないように思う。本書自体の評価は4としたい。2018/10/04
mayu
13
音を聴いただけでその時の状況をすべて当ててしまう加代子さんの名探偵ぶりがスゲェの1話目は確かにミステリーだった。気付けば3話目は随分とホラーチックでもあるし既に視界には天体を捉えていた。この3話目が一番好みだなあ。4話目は話がどんどん大きくなってストッパー外したみたいで面白い。キャラ設定が巧いしそれぞれ個性が際立っているとは思うけど、読後は音のイメージばっかり残って登場人物の印象が残らないのは何故なんだ?2015/07/25
臓物ちゃん
11
ああ面白かった。この人、風呂敷の広げ方がスゲェ上手い。最初は音響学版ガリレオかなーと思ってたら終盤から話が宇宙規模になって仰天。音でSFと言えばマクロスやシンフォギアや高野史緒といったブッ飛んだ作品しか知らなかったけど、本作みたいな日常の仕事にしっかり根を下ろしながらも壮大さを味わえるSFというのも非常に良い。ラノベデビューした作家さんだけあってキャラ描写もこなれてて、人間関係がどんどん繋がっていく様は見てて愉しい。でもイラストはSFマガジンに載ってたのが好きなので表紙イラストには不満かな。オススメ。2015/07/21